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 建物耐震化の促進は国や自治体にとって急務だ。発注者の意識を変えるには、自ら高い耐震性能を選べる仕組みづくりが欠かせない。その仕掛けとして、耐震性能を見せる取り組みが民間で始まっている。

 住宅の購入を考えていた家族は食い入るようにモニターを見つめていた〔写真1〕。将来のマイホームは巨大地震にどこまで耐えられるのか。埼玉県八潮市の住宅会社、益田建設のモデルハウスを訪れた家族は、2つの構造モデルを比較した。1つは建築基準法の現行基準(2000年基準)で建てた木造住宅。もう1つが益田建設が許容応力度計算を実施して、構造用合板や筋交いなどを増やした住宅だ〔図1〕。

〔写真1〕「倒壊」までを見せるシミュレーション
〔写真1〕「倒壊」までを見せるシミュレーション
益田建設(埼玉県八潮市)では木造住宅倒壊解析ソフトウェア「ウォールスタット(Wallstat)」を活用して、耐震性能別に住宅がどのレベルの地震動で倒壊するかを顧客に見せる(写真:益田建設)
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〔図1〕熊本地震にも耐える構造に
〔図1〕熊本地震にも耐える構造に
KiK-net益城の地震動をウォールスタットに入力したシミュレーション。壁面の色の変化で視覚的に地震による木造住宅のダメージが理解できる(資料:益田建設)
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 まずは、現行基準で定められた「ごくまれに起こる地震」の地震動を入力する。地震動による揺れを受けて、建基法レベルのモデルは壁の色が一部で変わった。灰色は壁面の残存耐力が100%の状態。黄色は70%、橙色は50%を示す。色の変化で直感的に揺れに弱い部分が分かる仕組みだ。

 建基法が想定する地震なら、どちらも倒れないじゃないか──。そう家族が安心したのは束の間だった。

 「では、熊本地震の地震動で比較してみましょう」と益田建設の営業担当者がシミュレーションの数値を変えた。「うわっ」と家族から声が上がる。建基法レベルのモデルはすぐに壁面が赤くなった。赤色は壁面耐力が0%に低下したことを示す。みるみるうちに住宅は倒壊し、1階部分は完全につぶれてしまった。

 一方、益田建設が高耐震化したモデルは、一部で壁面の残存耐力が50%になったものの、住宅が倒壊することはなかった。

 益田建設では2016年秋から3次元の構造解析モデルを使った耐震シミュレーションを提供している。同社企画設計部の鈴木強部長は「このサービスを聞きつけて、新築の相談に訪れる顧客が増えている」と話す。