春は、新しい仲間が職場に現れる季節だ。彼らは、多くの関門を乗り越えてきた勝者だが、新しい環境に戸惑い、多くのストレスを感じている。その結果、本来持っている資質を十分に発揮できていないこともあるだろう。

一方、彼らを迎える先輩たちは、自分たちが10割打者であると思い込み、彼らのネガティブな点ばかりを探索していることに気づいていない可能性がある。ひょっとしたら、3割打者の新人をダメ扱いにしているかもしれない。そして、「今時の新入社員は...」という話題で盛り上がっている。
筆者は米スリーエム(3M)およびスリーエムジャパンにおける30年以上にわたる研究開発とイノベーション人材開発の業務の中で、イノベーション創出のためのさまざまなマネージメント手法を体得し、実践してきた。その結果として、過去の成功体験と異なる経済環境下では、脳科学(ニューロサイエンス)を積極的に活用して「ポジティブに働く人間の本質の出現を強化し、ネガティブに働く人間の本質の出現を抑制することが、組織や人のモチベーションを高めることに有効である」と導き出している*1。
業務上の直接的なやり取りはマネジャークラスが多いが、最近は新入社員など若手技術者とも積極的にコミュニケーションをとるようにしている。また、大学のMBAコースの講師も務めており、その中で比較的若い人の悩みや考え方にも触れてきている。
その経験から、新入社員に対して愚痴をこぼしたくなった先輩社員たちに、2つの行動をお勧めする。それは、[1] 先入観を捨てて、如実知見(あるがままの姿を見る)のマインドセットを持つこと、[2] 新人のストレス耐性度を注意深く観察し、ストレス耐性度を向上させる方法を決定すること、である。