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 「忙しくて十分な睡眠時間が取れない」「朝起きるのがつらい」「寝ても疲れが取れない」――。こういった睡眠に関する悩みを新入社員から聞くことが多くなりました。その結果として、「頭がすっきりせず、考えがまとまらない」「感情が抑えられず、冷静で客観的な意思決定ができない」といった状況に陥ってしまいます。覚醒時における仕事の質の低下は、睡眠の質と量に問題があるのです。

深いノンレム睡眠で「質」を向上

 まず睡眠の質については、「明敏な覚醒を得るための睡眠の行動指針」を筆者の経験に基づいて説明しましょう。携帯電話機のアプリケーション・ソフトウエアに睡眠の質を容易に測れる「Sleep Cycle」があります。筆者はこのSleep Cycleと「iPhone」のマイクおよび加速度センサーを使って体の動きを検出してレム睡眠とノンレム睡眠の時間の深さを測定しています。

図1 Sleep Cycleの事例(筆者)
図1 Sleep Cycleの事例(筆者)
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 図1は、筆者の2017年において快睡度がベストだった際のデータです。入眠時に約90分間の深いノンレム睡眠[図1の(1)]を確保しており、高い快眠度を引き出してくれました。この「入眠時に90分の深いノンレム睡眠」を確保することで睡眠の質が向上し、例えば急な仕事が入って睡眠時間が短くなってしまったときでも、覚醒時のパフォーマンスを高めることができます。

 では、なぜノンレム睡眠が睡眠の質を向上させるポイントになるかというと、睡眠が脳を回復し浄化することにつながるからです。これは、脳科学の点からも明らかです。

 本稿の後半で詳しく説明しますが、「グリンパティック系」と呼ばれる脳の老廃物(アミロイドβなど)除去システムがあります。このグリンパティック系による老廃物の排出が睡眠時、特にノンレム睡眠時に促進されるのです。そして、睡眠時には1日に分泌される成長ホルモン(細胞の成長や新陳代謝促進など)の80%が分泌され、さらに海馬から大脳皮質に情報が移動し、記憶が保存されるのです。