PR

 今回から始まるこの連載では、書籍「プレモダン建築巡礼」(2018年4月23日発刊)のなかから、「旅行のついでにあの建物を見に行ってみようか」「昔見たあの建物を再訪してみよう」と思ってもらえそうな記事をいくつか紹介する。

書籍「プレモダン建築巡礼」の表紙(装丁:neucitora、イラスト:宮沢 洋)
書籍「プレモダン建築巡礼」の表紙(装丁:neucitora、イラスト:宮沢 洋)
[画像のクリックで拡大表示]

 本書で「プレモダン建築」と呼んでいるのは、明治維新から大正、そして昭和に入り終戦までの約70年間に建てられた建築物を指す。戦後に主流となる「モダニズム建築」(合理主義に根差した建築)に対して、明治維新で輸入された「様式建築」(歴史的な装飾などを採り入れた建築)や、モダニズムへと移行する“過渡期”の建築だ。国内に現存するこれらの建築のなかでも特に評価の高い建築を50件巡り、イラストと写真、文章で紹介したのが本書だ。

 2005年から続く日経アーキテクチュアの連載「建築巡礼」をベースにしており、書籍化はこれで7冊目になる。イラストを担当しているのは、日経アーキテクチュア編集長である筆者(宮沢洋)で、写真と文章は建築ジャーナリストの磯達雄氏が担当している。

 今回はウェブ連載の初回なので、自己紹介がてら、この「建築巡礼」という連載がどうやって始まったのかを紹介したい。

 やや大げさにはなるが、連載スタート時にはこんな“問題意識”があった。

 「戦前の建物は大切にされるのに、戦後の建物はいつの間にか壊されてしまう」

書籍第1巻の「昭和モダン建築巡礼 西日本編」から引用。初期はイラストがモノクロだった(イラスト:宮沢 洋)
書籍第1巻の「昭和モダン建築巡礼 西日本編」から引用。初期はイラストがモノクロだった(イラスト:宮沢 洋)
[画像のクリックで拡大表示]

 バブル期に建築専門雑誌である日経アーキテクチュアに配属され、10年ほどたった頃だと思う。なぜ日本人は戦後の建物よりも戦前の建物を大切にするのかと素朴な疑問を抱くようになった。