「反省の弁」から始まるプレモダン編
日経アーキテクチュア連載の建築巡礼・プレモダン編に「寄り道」を加えて再編集したのが書籍「プレモダン建築巡礼」である。
本書は、筆者の「反省の弁」から始まる。前書きから当該部分を引用する。
「あくまでイラスト視点の感想だが、この時代の建築は、これまでのシリーズで最も描くのが楽しかった。(中略)実は10年前にこの連載を始めた頃、2人とも戦前の建築にそれほど興味がなかった。しかし、江戸時代以前の『伝統建築』と戦後の『モダニズム建築』を『つなぐもの』としてプレモダン建築を見ると、つくり手の葛藤が浮かび上がってきて、それを絵に描きたくなる。書籍をまとめる『編集者』としてそれらの絵を改めて眺めてみると、喜々として描いている様子が伝わってくる。自分でもあきれるほど描き込んだ絵がある」
そして、本書の帯(カバーの上に巻く横長の紙)には、悪びれずに「シリーズ史上最も面白い時代!」と書いている。
2人で相談したわけではないのだが、磯氏も「あとがき」に似たような反省の弁を書いている。そちらは書籍を読んでいただきたい。
結論を言えば、戦後の建築も面白いが、戦前の建築もじっくり見れば負けず劣らず面白い。両者は断絶した関係ではなく、密接につながっている。モダニズム建築が好きな人は戦前の建築もきっと好きになれる。逆もまたしかり。建築に少しでも興味がある人であれば、本書「プレモダン建築巡礼」はその興味を広げる何らかのきっかけになるはずだ。ぜひご覧いただきたい。
1ページ本文第7段落の「戦後の建物を大切する」を「戦前の建物を大切する」に訂正しました。2ページ本文第2段落の旧日本相互銀行本店の解体年を「2008年」に訂正しました。[2018/04/19 13:20]