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 日経アーキテクチュアが4月23日に発刊した書籍「プレモダン建築巡礼」から、いくつかの記事をより抜いてご覧いただきます。今回は「日本建築の父」あるいは「母」とも呼ばれるジョサイア・コンドルが設計した旧岩崎久彌邸。1986年(明治29年)の竣工です。書籍に収録していないオマケ写真も併せてどうぞ!

所在地=東京都台東区池之端1-3-45 設計=ジョサイア・コンドル 竣工=1896年(明治29年) 交通=東京メトロ千代田線湯島駅から徒歩3分(写真:磯 達雄)
所在地=東京都台東区池之端1-3-45 設計=ジョサイア・コンドル 竣工=1896年(明治29年) 交通=東京メトロ千代田線湯島駅から徒歩3分(写真:磯 達雄)
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 レンガ塀に囲まれた敷地に入り、坂道のアプローチを上り切ると、シュロの木の向こうに、木造2階建ての洋館が見えてくる。北面のファサードは塔を右に寄せた非対称の構成で、窓周りには華麗な装飾が施されている。この建物が岩崎久彌邸の洋館だ。久彌は三菱財閥の3代目で、創業者である彌太郎の息子である。

 洋館は主に接客のために用いられ、日常の生活は西側に隣接する和館の方で営まれたという。

 正面玄関から洋館に入ると、1階、2階ともホールを中心として、食堂、集会室、客室、書斎などの部屋が並ぶ。壁、天井の仕上げやデザインは部屋ごとに異なっており、どこをとっても見どころがある。階段の周りは特に凝っていて、柱には植物をモチーフにした華麗な装飾が施されている。こうしたデザインは、英国で17世紀前半にはやったジャコビアン様式を採り入れたものといわれる。

(イラスト:宮沢 洋)
(イラスト:宮沢 洋)
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 もっともこの建物を何様式と特定するかは難題で、ベランダがついているあたりはコロニアルだし、内部の意匠にはルネサンスやイスラムも採り入れられている。東側に併設された撞球室は、米国木造ゴシックの流れが指摘され、設計者自身はスイスの山小屋風と表現している。古今東西の様々な様式がミックスされているのだ。