建築でロボットが活躍する場は施工現場に限らない。目的も、人手不足解消にとどまらず、ロボットならではの能力を生かすことにまで広がる。今回は番外編として、建築現場以外で活躍するロボットを紹介する。
前田建設工業と千葉大学大学院工学研究院平沢研究室が共同開発するのは、アーム型ロボットを使った「木造新生産システム」だ。1号機が動く加工現場を訪れると、アームの先端に付けた丸ノコが高速で回転しながら、迷いなく木材を切っていた。
同システムは、ロボットにBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを与えることで、大断面木材を「多品種少量生産」しようというもの。大規模木造建築でコスト低減を図るとともに、意匠面の競争力を高めるのが狙いだ。
2016年から開発を始め、ほぼ実用段階に入っている。前田建設工業の新技術研究所(茨城県取手市)内に建設中の建物で、このロボットが加工した集成材を構造材の一部に活用した。傾斜のついた屋根が放射状に広がるデザインで、仕口や寸法など同じ形の構造材はほぼない〔写真1〕。
木造新生産システム(前田建設工業、千葉大学)
- ロボットアーム単体重量:560kg
- 最大可搬能力:70kg
- 最大リーチ:2050mm
- 丸ノコツール寸法:直径550mm
- 加工精度:約0~-0.5mm
前田建設工業建築事業本部ソリューション推進設計部BIMマネージメントセンターの綱川隆司センター長は、「加工精度が高く、新しい仕口形状などを開発できる可能性がある。自由な形状がつくれる木造の良さを拡張できる」と手応えを語る。