AIブームを巻き起こした深層学習を支えるGPU。そのGPU市場でシェアトップの米エヌビディア(NVIDIA)は、データセンターから自動車まで、全方位をサポートするAI半導体メーカーに姿を変えた。しかしその道のりは、決して順風満帆と言えるものではなかった。テック企業を変貌させた技術経営の深層を、2018年の開発者向けイベント「GTC(GPU Technology Conference)」から読み解く。

 Q&Aセッションでイスの上に立ち、饒舌に語る。報道陣からの質問に長時間、丁寧に返答する。GPU最大手の米エヌビディアCEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は、例年よりも非常に機嫌がよかった。2018年3月26日に開催された開発者向けイベント「GTC」での立ち振る舞いは、昨年までのGTCとは明らかに雰囲気を違えていた。

報道陣向けのQ&Aセッションでイスの上に上って話始める米エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・ファンCEO
報道陣向けのQ&Aセッションでイスの上に上って話始める米エヌビディア(NVIDIA)のジェンスン・ファンCEO
(撮影:塩田 紳二、以下同じ)
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 ここ数年のGTCを振り返ると、同氏はGTCには参加するものの、メディアとの接触は最低限。基調講演後のQ&Aセッションなどにも姿を見せなかったし、メディアが集まっているところにフラッと寄ってくることもなかった。ところが今回のGTCでは、Q&Aセッションでイスの上に立ち、饒舌に語る。さらに2回目のQ&Aでは、長い時間、報道陣からの質問に丁寧に返答していた。そもそも2回もQ&Aに登場することはこれまでになく、異例のことだ。GTCの期間中にラスベガスで開催された米アドビシステムズ(Adobe Systems)のイベントに登壇したその午後にはGTC会場にとんぼ返りするという、対外的にも積極的な活動を見せた。

 こちらが戸惑うほどの姿勢の変化をもたらしたのは、ジェンスンCEO自身の不安感が一掃された現れ――筆者はそう考えている。AI(人工知能)関連技術への集中的な活動が功を奏して、主力商品であるGPUのアーキテクチャーのAIシフトが完了。財務面はともかく、少なくとも技術面での不安要素がなくなった。

 「AIに強い」GPUへの転換劇は、ここ5年で起きたエヌビディアの危機の歴史でもある。技術開発の経緯を振り返りながら、同社がどうやってAI企業に変貌したのかを見ていくことにしよう。