建築界の「働き方改革」の現状についてシリーズでお伝えする。まずは、「建築ワーク・イノベーション」をテーマに、建築界の先頭を走る4人が実態を語り合ったイベントのリポートから。パネリストとして登壇したのは、シーラカンスK&Hの工藤和美氏、日建設計の山梨知彦氏、アラップの金田充弘氏、フジワラテッペイアーキテクツラボの藤原徹平氏。2回に分けて要旨を報告する。
働き方や契約などについて本音を語り合おう──。4月20日、日経アーキテクチュアは購読者を招いて「日経アーキテクチュア・フォーラム2018」(ヤクルトホール、東京都港区)を開催した。
パネリストは工藤和美氏(シーラカンスK&H共同代表)、山梨知彦氏(日建設計常務執行役員、設計部門副統括)、金田充弘氏(アラップシニアアソシエイト)、藤原徹平氏(フジワラテッペイアーキテクツラボ主宰)の4人だ。宮沢洋・日経アーキテクチュア編集長の司会により、働き方、設計ニーズ、報酬に関する10の質問に沿って3時間にわたり熱い議論を交わした。前編の今回は、「働き方改革」、「設計・監理料」、「契約書」に関する議論を中心に報告する。
Q.世を挙げての「働き方改革」のムーブメント、どう思いますか?
工藤和美(シーラカンスK&H):週休2日が普通になっている現在、設計事務所は昔ながらの働き方を変える必要がある。ただし、単一のことを繰り返す作業とコーヒーを飲みながらじっくり考えていくような作業とは質が違う。単に時間の長短ではなく、その時間がもたらす満足度の価値観に焦点を当てるべきではないか。
山梨知彦(日建設計):個人的には、何にせよ受容的であることはクリエーティブでないと考えている。頭脳労働でも、やらされている感覚では意味がない。働き方改革には、与えられる前に自分たちで改革していくという意識が必要だ。
金田充弘(アラップ):私は現在、東京芸術大学で教えているためアラップと時短契約をしている。ロンドン事務所や香港事務所には、同様に大学で教えるために時短している人や、「ヨットが好きで休日が2日では足りない」「ボランティア活動支援のため」などさまざまな理由で週休3日の契約をしている人もいた。いろいろな形の働き方があっていい。
日本の社会で従来からのやり方を否定するのは難しいが、皆で一斉に取り組めばできるかもしれないという気もしている。働き方改革を一度試してみたら、意外といいなと思えることに気付くかもしれない。
藤原徹平(フジワラテッペイアーキテクツラボ):バランスを取りながら働きましょうという方向性自体は賛成だ。ただしその際には、日本人が過重な労働を強いられている原因の分析が欠かせない。莫大な労働をもたらす一因には、年度会計によって年度を繰り越せない仕組みなど、制度の問題もある。根本から見直すことが重要だ。