人工衛星をIoT(Internet of Things)のセンサーの一種として利用できる環境が整い始めてきた。背景にあるのは、地球上のあらゆる地域を観測する衛星インフラの整備である。衛星開発の技術革新で製造や打ち上げにかかるコストが低下したことで、民間のベンチャー企業や大学などが開発する「超小型衛星」が続々と宇宙に飛び出している(関連記事:「将来は衛星1機300ドル、『安い』が変える宇宙産業」)。

 2018年内には、宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機(2018年9月11日に打ち上げ予定)やH-IIAロケット40号機(10月29日に打ち上げ予定)などに相乗りする形で、超小型衛星を宇宙に放出する計画が進む。

 衛星が搭載するセンサーの性能も向上している。例えば、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2017年12月に打ち上げた気候変動観測衛星「しきさい(GCOM-C)」は、近紫外から熱赤外までを可視化する多波長光学放射計を搭載し、大気中のちりや植生、海面温度などの観測が可能だ(関連記事:「JAXA、気候変動観測衛星『しきさい』を種子島で公開」)。現在、JAXAが開発を進める先進光学衛星「ALOS-3」は、広域の画像を地上分解能0.8mと高精細に観測可能である。

一次産業に強いニーズ

 衛星で地球を観測するリモートセンシングの実利用で先行するのは、農業分野をはじめとする一次産業だ。例えば青森県のブランド米「青天の霹靂(へきれき)」は、品質管理に衛星リモートセンシングを活用している。広域の水田をカバーする衛星画像を解析し、適切な肥料の量や収穫日を水田ごとに推定して品質ばらつきの低下に役立てている。

 農業分野に続いて、漁業や林業分野でも衛星リモートセンシングを活用する事例が登場し始めた。センサーの設置や維持にコストのかかる「洋上」や「山中」といった、その場に行くこと自体がハードルの高い場所を観察するセンサーとして、衛星の有用性に注目が集まってきたからだ。

 既存のIoT技術の導入が容易ではないこうした分野では、業務の多くが肉体労働や熟練者の“勘と経験“に頼りがちだった。宇宙から地球を眺める衛星を「監視役」として利用することで、一次産業で顕著な労働力減少対策や技術の継承、持続可能な産業構造の実現に期待が集まる。