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 当初、ディーウェーブの商用機について「本当に量子効果を使っているのか」と懐疑的に見る専門家も多かった。しかし米航空宇宙局(NASA)や米グーグルなどが評価用に導入。実際に評価した企業の声やディーウェーブが段階的に公開した技術情報などから、量子効果を計算に用いたコンピュータであると認める声が強まっている。

 初号機は128量子ビットだったのが、現行機の「D-Wave 2000Q」は2048量子ビットを実装するなど、着実に性能向上を果たしてきた。

ディーウェーブ・システムズが商用化した最新機種の「D-Wave 2000Q」
ディーウェーブ・システムズが商用化した最新機種の「D-Wave 2000Q」
(出所:ディーウェーブ・システムズ)
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 業務利用を目的にして、ディーウェーブと協業するユーザー企業も増えてきた。自動車大手の独フォルクスワーゲン、投資銀行大手の米ゴールドマン・サックス、欧州エアバスなどだ。日本からは豊田通商が「ビジネス創出」を目的に同社と協業している。

 フォルクスワーゲンは交通渋滞を緩和するなど都市交通問題の解決に、ゴールドマン・サックスは投資ポートフォリオの最適化などに量子コンピュータを適用するため協業したと明らかにしている。ただし各社ともに業務で使う段階ではなく、技術を検証したり業務に使うためのアルゴリズムを開発したりしている段階のようだ。

 フォルクスワーゲンのマーティン・ホフマン グループCIO(最高情報責任者)は米国で開催された量子コンピュータのシンポジウムで、量子コンピュータを検証している理由を「実用段階に来た時に、それを可能な限り早く業務で使用する存在になりたいからだ」と説明している。逆に言えば、商用化で先行したディーウェーブのマシンでさえ、実業務で量子コンピュータを使っているユーザー企業はまだいないと見られる。

 量子コンピュータはまだ発展途上にあり、ユーザー企業はその計算能力が切り拓く夢に耳を傾け始めた段階といえる。「夢のコンピュータ」の市場で、日本企業が巻き返す余地は十分にありそうだ。

独自の量子技術で競うか、半導体回路で対抗か

 ディーウェーブを追う日本勢の開発アプローチは大きく2つに分かれる。

 第1は、ディーウェーブと同じ量子計算機の土俵で、独自の回路技術を確立して優位性を打ち出そうとするアプローチだ。NECとNTTなどの研究グループがこの方法を採る。

 第2は、最適化問題を解く際に繰り返し現れる処理を専用LSI化して加速させることで、通常の半導体技術で量子計算に対抗しようというアプローチだ。富士通と日立製作所がこの方法を採っている。