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 どちらのアプローチでも、ディーウェーブを含む5陣営のマシンに共通するのは、組み合わせを総当たりで計算して「真の最適解」を導くものではないことだ。いずれも演算量を減らしながら真の最適解に十分に近い「実用解」を探し出すアルゴリズムを基にしている。この実用解を探しだすための計算モデルとして、磁性体の結晶格子を模した「イジングモデル」と呼ぶモデルを使っている点も5陣営に共通している。

 第1の方法を採るNECは、ディーウェーブと同じ量子アニーリング方式を採用した。ただし単なる追従ではなく、これまでの研究成果を生かし、独自構造の量子ビット回路を開発した。超伝導素子とマイクロ波回路を組み合わせて開発した量子パラメトロン素子だ。

 NECは1990年代から「量子ゲート型」と呼ぶ量子コンピュータの基礎研究に取り組み、1999年に世界で初めて超伝導固体素子を使った量子ビットの動作を実証した実績を持つ。超伝導回路を使った量子パラメトロンも、量子ゲート型の研究開発で生まれた素子だ。

NECは、理化学研究所などと超伝導回路を使った量子パラメトリック素子を開発。量子アニーリングに用いた特性を調べ、商用機開発を決断した
NECは、理化学研究所などと超伝導回路を使った量子パラメトリック素子を開発。量子アニーリングに用いた特性を調べ、商用機開発を決断した
(出所:NEC)
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 この素子を量子アニーリング方式に転用してみると、ディーウェーブのマシンよりはるかに特性が良い量子ビットが作れる可能性が判明したという。量子ビット間の結合を維持する「コヒーレンス」の時間を「数ミリ秒と長くできた」(中村所長)のだ。量子ビットのコヒーレンス時間が長いと、量子状態をゆっくり変化させて良好な解を探すなど、量子コンピュータの計算能力を高めやすくなる。

 超伝導素子を使うディーウェーブの量子ビットのコヒーレンス時間はマイクロ秒のオーダーとされている。NECが第1号機を完成させる目標時期は2023年だが、この時期でもディーウェーブなどに対する優位性を十分に確保できるとする。まず2000~3000量子ビットで第1号機を完成させる計画だ。

 NTTや国立情報学研究所(NII)などの研究グループは、レーザーネットワークを使った「量子ニューラルネットワーク(QNN)」方式と呼ぶ独自の量子計算の方式を開発した。光ファイバーリング内にレーザー光を周回させてパルス群を発生させる。このパルス群を量子ビットとして使い、解きたい最適化問題に当てはめて、パルスの現れ方で最適解の候補を割り出すという全く新しい方法だ。NTT出身でスタンフォード大学教授などを務めた山本喜久氏が中心になって開発した。

 同方式の特徴は常温で稼働する点。極低温で稼働させる量子アニーリング方式と比べてサイズや消費電力の点で有利という。