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 日本自動車工業会によると、日本の乗用車市場(軽自動車含む)において、2016年にHEVは約128万台販売された。これは同年の乗用車全体の販売台数の約24%に当たる。現在、HEVは日本の乗用車市場で主要なパワートレーンになっているといえる。トヨタだけでなく、ホンだ、日産自動車、スズキなど他の完成車メーカーも相次いでHEVを投入しており、ハイブリッド技術において、日本OEMは世界的に優位性があるといっていいのである。

 これに対して欧州OEMは、母国地域となる欧州において、燃費向上技術としてディーゼルエンジンの開発に力を注いできた。これは、ガソリンエンジンに比べてディーゼルエンジンは燃費が良く、欧州市場でニーズの高いロングドライブに適しているからである。欧州自動車工業会(以下、ACEA)の「ACEA Pocket Guide 2017-2018」によると、欧州乗用車市場における2014年のディーゼルエンジン車のシェアは53.6%だった。

 ところが、2015年9月に明らかになったドイツ・フォルクスワーゲン(VW)の「ディーゼル不正事件」、いわゆる「ディーゼルゲート」により、欧州の各完成車メーカーはディーゼルエンジン戦略の根本的な見直しに迫られた。きっかけは、「VWのディーゼルエンジン乗用車において、排出ガスに不正なコントロールを行っている可能性がある」というICCTの発表だった。ちなみにディーゼルゲートとは、米国の政治スキャンダルとして有名なウォーターゲートをもじった造語である。

 このディーゼルゲートが起こる前、欧州の完成車メーカーは、ディーゼルエンジンをさらに改良することにより、欧州のCO2規制に対応する予定であった。欧州のCO2規制では、各完成車メーカーは販売する車両の1km走行当たりのCO2排出量(販売量に応じて加重平均した値)を、基準値以下に抑える必要がある。現在の規制値は2015年規制値の130g/kmだが、2020年には95g/kmに、2025年以降にはさらに強化される予定である。

 もしこの規制値を満足できない場合、超過分のCO2×95ユーロ×販売台数で、完成車メーカーへの罰金が計算される。仮に超過量が2g/kmとわずかだったとしても、年間販売台数が100万台の場合、罰金の額は190万ユーロ(247億円、130円/ユーロで計算)にも上る。しかしながら、ディーゼルゲート以後は、排ガス規制強化が進み、ディーゼルエンジンでこの規制に対応しようとすると対策コストが大幅に増加することが判明した。そのうえ、消費者のディーゼルエンジン車に対する人気も低下したため、完成車メーカーはディーゼル車頼みのCO2規制対応からの脱却を迫られている。

 調査会社のJATO(JATO Dynamics)の2018年1月のプレスリリースによると、欧州におけるディーゼルエンジン乗用車のシェアは、2016年は49%、2017年は44%となった。2014年の53.6%に比べると、2017年は約10ポイントの大幅な減少となり、すでに消費者の「ディーゼル離れ」は現実のものとなりつつある。