今回は本連載の最終回として、アビームコンサルティングが分析した2030年に向けての自動車産業における「真の競争軸」について「電動化」「自動運転」「シェアリング」「コネクテッド化」の四つの分野に分けて解説する。

 まず、EVを中心とした自動車のパワートレーンの電動化では、EVの世界販売台数が2025年には570万台、2030年には約800万台に達すると予測した。一方で、2025年時点で90%、2030年でも85%のクルマが何らかのエンジンを搭載すると予想され、必ずしもEV一辺倒ではない。

 今後のEV化の進展で四つの新たな競争軸が浮かび上がる。一つは、バッテリー分野で膨大な投資が必要となることから「バッテリー開発・投資およびEVの開発・投資において官と民、および競合する企業同士の協業が重要となること」である。

 また、EVでは「回生ブレーキ」が多用されるためブレーキパッドの交換機会が減るなど、自動車販売店での売り上げと収益の柱であった「点検・整備」と「補修部品およびアフターセールス部品」による売り上げが減少する可能性が高い。こうした販売店の売り上げ減少に加え、EVではバッテリーの劣化という問題もある。この二つの課題を解決する方策として当社は、ユーザーがクルマを購入するのではなく、使用する期間の「使用権」を購入する「サブスプリクション契約」が新たな競争軸になると考えている。

 さらに、今後のEV開発競争で勝ち抜くうえで、世界最大のEV市場である中国は魅力的な市場であり、資金も有能な技術者も集まるため「EVビジネスは中国での成功が重要なこと」も新たな競争軸である。さらに日本メーカーが先行する燃料電池車は「ゼロエミッション車として技術的な参入障壁をつくりやすく、日本メーカーにとって競争優位な分野であること」が四つめの競争軸として挙げられる。