米アップルは2018年6月5日(日本時間)、米カリフォルニア州サンノゼで開発者向けイベント「WWDC 2018」を開催した。基調講演ではソフトウエアを中心に様々な発表があった。筆者が注目した内容を紹介しよう。
macOS/iOS統合環境は「No」
今年のWWDCで最も印象に残ったのは、「macOSとiOSは統合しない」とアップルが完全に否定したこと。両方のOSが動作するハイブリッド端末の発表もなかった。その一方で、iOSアプリをmacOSアプリに移植、または同時に開発しやすくするクロスプラットフォームな開発環境の提供を予定していることが発表された。
現時点でもiOSとmacOSに同じアプリが提供されている場合があるが、移植にはノウハウと労力を要する。原因は、両者のユーザーインタフェースの違いによるものが大きいとされる。
アップルは以前から、MacにはiOS端末のように画面をタップしたりスワイプしたりする操作はふさわしくないとコメントしており、両者を統合することは妥協やトレードオフを生むとして公式に否定してきた。その一方で、iOSアプリのようにシンプルな機能のmacOSアプリを望んでいるユーザーもいると認識しているという。今回の開発環境は両方を矛盾なく解決するためのものだろう。
macOSアプリは「AppKit」、iOSアプリは「UIKit」と呼ばれる異なるフレームワークがUI部分を担っており、移植の際には大幅に書き換えなければならなかった。今回、macOSに「UIKit for macOS」を提供することにより、iOSアプリとして開発したアプリを、macOSに移植する際の負担が軽減できるとのことだ。
一方、Macに搭載されているCPUをインテル製から、iOS端末と同じようにArmアーキテクチャーベースの自社製に置き換えるという噂には触れず、否定も肯定もされなかった。この点は残念に思う。
筆者は、半年前ほど前から外出先での仕事用端末として、iPad Pro+外付けキーボードを持ち歩いている。以前はそれに加えて、必ず12インチのMacBookも持ち出した。
MacBookを携行しなくなったのは、工夫をすればiPadだけでもある程度の仕事ができるようになったと感じたからだが、それでもまだMacでしかできない案件もある。モバイル用にMacとiPadの両方を兼ねる「ハイブリッド端末」があれば安心だ。
個人的には、今後両方のOSを切り替えて使える端末として登場する可能性に期待したい。