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 カナダ最大のAI(人工知能)スーパークラスター(集積地)がトロントだ。ディープラーニング(深層学習)の研究で名高いトロント大学を中心に、大企業のAI研究所やAIスタートアップがひしめく。トロントがあるオンタリオ州政府は、AIの修士号を持つ研究者を年間1000人育成する計画を打ち出している。

 トロント大学と言えば、ディープラーニングの「ゴッドファーザー」と呼ばれるジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)教授の存在が大きい。ヒントン教授の門下からは、大手テクノロジー企業のAI研究所を率いるAI研究者が複数出ている。

 有名なのは米フェイスブック(Facebook)のAI研究所を率いるヤン・ルカン(Yann LeCun)氏。米アップル(Apple)のAI研究を統括するルスラン・サラクートディノフ(Ruslan Salakhutdinov)氏や米オープンAI(OpenAI)の共同創設者であるイリヤ・サツケバー(Ilya Sutskever)氏もヒントン教授の門下生だ。

トロント大学が輩出したAI研究者
トロント大学が輩出したAI研究者
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 ヒントン教授が門下生と起業したスタートアップDNNリサーチ(DNNresearch)は2013年に米グーグル(Google)に買収された。グーグルのAI研究部門であるGoogle BrainやDeepMindには、今もヒントン教授の門下生やトロント大学出身者がシニアリサーチャーとして多数在籍する。

 トロント大学が輩出するAI人材を求めて、数多くの大手テクノロジー企業がトロントにAIの研究開発拠点を設けている。グーグル、米ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)、米トムソン・ロイター(Thomson Reuters)などが2016~17年にAI研究拠点を設置。2018年5月には韓国サムスン電子やeコマースの米エッツィ(Etsy)、2018年6月には米エヌビディア(NVIDIA)がトロントにAI研究拠点を開設する計画を明らかにした。

ひと夏で270人のAI人材を育成

 トロントがあるオンタリオ州政府は、AI人材育成をさらに加速させる方針だ。2017年にはオンタリオ州内の大学でAI関連の修士号を取得する学生の数を2023年までに年間1000人に増やす計画を発表した。そのためにトロントに設立したのが、オンタリオ州内の9大学と40社近くの民間企業が連携して設立したAI研究機関、ベクター研究所(Vector Institute)だ。

 2億300万カナダドルの予算を確保しているベクター研究所は、20人の常勤研究員と100人の博士研究員(ポスドク)を擁する。独自のAI応用研究を進めるだけでなく、学部卒業生向けのAI教育を提供したり、提携する他大学向けにAI人材育成プログラムを立案したりしている。

 2018年夏には社会人を対象とした約1カ月の「深層学習・強化学習サマースクール」も開講する。同サマースクールには60カ国から1200人以上の応募があり、270人が実際に学ぶ予定だ。チーフ科学アドバイザーにはトロント大学のヒントン教授が就任し、研究ディレクターはヒントン教授の門下生であるリチャード・ゼメル(Richard Zemel)氏が務める。

ベクター研究所のリチャード・ゼメル研究ディレクター
ベクター研究所のリチャード・ゼメル研究ディレクター
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