中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故では、天井板を吊り下げていた「あと施工アンカー」が抜け落ちたことが原因だった。
従来の目視点検や打音、触診では見抜けなかったアンカーボルトの施工品質をどのように評価するか――。経済産業省の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に採択された大阪大学とアミック(横浜市)は、新設時のあと施工アンカーを対象に、非破壊検査による評価手法の開発に乗り出した。
サポイン事業では、無機・有機の接着系と金属系の計270本に上るアンカーボルト試験体を製作。考え得る様々な施工不良を忠実に再現し、試験した。
活用したのは「電磁パルス法」。あと施工アンカーの頂部付近にコイルを装着し、アンカーボルトの頂部と周囲のコンクリートの計5カ所にセンサーを設置すれば準備完了だ。
コイルから発生させた磁場の作用で、アンカーボルトに二次電流が流れ、その電流が新たな磁場を発生。磁場同士が干渉する影響で、コンクリートに拘束されているアンカーボルトに微小な振動が生じる。そこから伝わる弾性波を測ることで、施工品質の良しあしを判定する。
引張試験で設計耐力を下回る欠陥のあるアンカーボルトは、電磁パルス法で100%検出できることを実証。さらに、設計耐力を上回っているが、実は施工不良があったという従来見過ごされていたアンカーボルトも検知できることが分かった。
検査時間は1本当たり5分。6つの指標を使って定量的に評価する方法を編み出した。評価結果は分かりやすい「○」、「△」、「×」を採用。測定終了後1秒で表示する。
「検査のデータがたまってくれば、既存のあと施工アンカーにも適用できる可能性は十分にある」と、アミックの三輪秀雄専務はみている。