腐食の程度をランク付け
検出する信号がユニークだ。一般的に電磁波を非破壊で使うときは振幅を測るが、このシステムでは透磁率と導電性に着目した。位相の違う2つの信号から導き出されるグラフの傾きで、腐食の程度を判別する。
例えば、鉄筋の種類に応じて、あらかじめ「腐食なし」、「腐食小」、「中」、「大」の傾きを事前に定義しておけば、スキャンした箇所にある鉄筋を瞬時に評価できる。
「さびの厚さを測るのではなく、腐食の程度を4ランクぐらいに区分けすることが狙い」。NIMS構造材料研究拠点の土谷浩一拠点長はこう話す。定期的にスキャンすれば、腐食の進展が分かるため、補修の計画が立てやすくなる。スクリーニング技術として活用が見込めそうだ。
スキャン装置が軽く、コンクリート表面をなぞるだけで鉄筋の腐食程度の状況が分かるので、自治体の職員などでも手軽に使える。現場では、外部電源は不要。装置から延びるコードをパソコンにUSBでつなぐだけでよい。
社会実装に向けて、これまでに新幹線高架橋で現場実験を実施。今後は、電柱などもターゲットに入れて試験を繰り返す予定だ。また、鉄筋の腐食具合だけでなく、かぶり厚さと鉄筋の直径も1台で測定できるような装置も開発している。