計画通りに施工できたのかどうか――。今、非破壊検査技術の確立が最も求められている工種が、薬液注入などによる地盤改良工事だ。ボーリング中心の調査や出来形検査が見直され、複数の物理探査を組み合わせた技術の開発が進んでいる。
東亜建設工業が羽田空港や福岡空港で手掛けた地盤改良工事で、計測データの偽装や施工不良が相次いで発覚したのは2016年のこと。従来のボーリング調査だけでは、こうした不正に対応できない実態が浮き彫りになった。
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国土交通省は17年、「埋立地等における薬液注入工法による地盤改良工事に関する検討委員会」(委員長:善功企・九州大学大学院工学研究院特任教授)を設置。施工前と施工中、施工後の各段階で、地盤状態を適切に確認する方法を検討している。
ただし、先に結論から言うと、現時点では非破壊検査を本格導入する段階までには至っていない。もう少し補足すると、導入を試みはしたが「物理探査を使うには時期尚早」という声が委員から上がり、検討を断念した経緯がある。
話題に上がったのは、地盤改良前の調査だ。現状では、100mを超えない間隔でボーリングを実施する。しかし、埋め立て地盤の場合、その間隔ではシルトや粘土が複雑に分布した土層構成を十分に捉えきれない。調査結果から、薬液の配合を誤って設定する可能性があり、期待した改良効果が得られなくなる。