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 世界初の中性子線によるインフラ非破壊検査の実現に向け、装置の小型化が進んでいる。コンクリート内部の水や空隙を検出するだけでなく、塩分量もコアを抜かずに測定できるのが特徴だ。

(イラスト:山田 タクヒロ)
(イラスト:山田 タクヒロ)
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 中性子線による非破壊検査を、世界で初めてインフラで実用化する目標を掲げる理化学研究所。中性子を発生させる装置「RANS(ランズ)」の2号機が間もなく完成を迎える。2号機の全長は5mほどで、1号機のおよそ3分の1。大幅な小型化により、車に載せて橋や道路の点検現場に持ち込める未来が見えてきた。

組み立て中のRANSの2号機。2017年3月に撮影(写真:理化学研究所)
組み立て中のRANSの2号機。2017年3月に撮影(写真:理化学研究所)
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■ 車載型RANSによる検査イメージ
■ 車載型RANSによる検査イメージ
人が歩くのと同程度の速さで車を走らせながら、舗装下にある水や空隙の検出を目指す(資料:理化学研究所)
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 中性子線を使って物質の透過画像を得る手法は「中性子イメージング」と呼ぶ。中性子線は、水素やリチウムといった軽元素に対する感度が高く、X線では識別が難しい水を検出しやすい。コンクリートに透過させると、内部にある水の位置を可視化するほか、検出手法によってはその量を測ることもできる。

 RANSは陽子線加速器でターゲットステーション内のベリリウムに陽子線をぶつけ、中性子ビームを取り出して対象に照射する。開発中の2号機では、加速する陽子のエネルギーを1号機の7メガエレクトロンボルト(MeV)から2.49MeVに低減。発生する中性子のエネルギーを小さくし、装置の小型化を実現した。

 理化学研究所中性子ビーム技術開発チームの大竹淑恵チームリーダーは、「観察したい対象に応じて、エネルギーが小さい中性子でも鮮明に検出できる手法を検討する必要があった」と説明する。