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工場の品質管理用のX線装置に着目

 「我々が着目したのは、地表に出ているグラウンドアンカー頭部の受圧板などのプレートだ。緊張力のかかったアンカー周りのプレートは引きずりこまれているはず。X線を当てて、その応力分布を測る」。大阪大学の鎌田敏郎教授は、こう説明する。

(イラスト:山田 タクヒロ)
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グラウンドアンカー頭部を再現した供試体とX線応力測定装置。X線を当てる対象はプレート(写真:大阪大学)
グラウンドアンカー頭部を再現した供試体とX線応力測定装置。X線を当てる対象はプレート(写真:大阪大学)
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 X線の照射には、工場製品の品質管理用として、溶接部の残留応力を測るために使われていた装置を採用。鎌田教授が目を付け、現場向けに転用しようと考えたのが事の始まりだ。合成木材による受圧板を販売する積水化学工業が加わり、2017年から西日本高速と3者で技術開発に着手する。

 プレート1点の応力を測るのにかかる時間はわずか90秒。グラウンドアンカーに向かって数点測れば、内側に引きずり込まれている応力分布が分かる。

 ただし、正確な応力を推定するには注意点がある。測定するプレートには、部材加工時の切断などで付与された残留応力が生じており、それが推定を妨げる恐れがあるのだ。電解研磨などで残留応力を取り除けば、かなりの精度で緊張力を推定できることが分かっているが、斜面で十分な研磨をするにはひと工夫が必要だ。

 17年の秋には西日本高速道路の山陽自動車道の切り土法面で、約30本の供用中のアンカーを対象に、開発中の装置を試験的に採用。治具でX線測定装置を取り付けるなど、現場で扱いやすい方法を検討した。