ショッピングサイトには、お薦め商品を表示する欄が設けられている。以前から欲しかった商品が掲載されて、思わず購入してしまった人も多いのではないか。中には思わぬ趣味嗜好品が表示されて「なぜこんな商品が表示されるのか」と戸惑った人もいるかもしれない。
お薦め商品の選定には「レコメンドエンジン」と呼ぶソフトウエアを利用する。今回は、大手ショッピングサイトのYahoo!ショッピングを例に、レコメンドエンジンのアルゴリズムを説明する。アルゴリズムを理解すれば、お薦め商品をどのように選んでいるのか、そのカラクリが見えてくる。
2つのアルゴリズムを使い分ける
Yahoo!ショッピングは、ユーザーがサイトを訪れるたびにお薦め商品をリアルタイムに選んで表示している。お薦め商品を選ぶ際は「ユーザーの行動履歴が重要な役割を果たす」(ヤフーのデータ&サイエンスソリューション統括本部の高久陽平氏)という。行動履歴とは、どのユーザーがどんな商品をいつ見たか、という情報だ。Yahoo!ショッピングのレコメンドエンジンの場合、自社内に蓄積したユーザーごとのアクセスログや、ユーザーが利用するPC内に保存されたクッキー(Cookie)などから行動履歴のデータを収集する。
Yahoo!ショッピングのレコメンドエンジンは、大きく2つのアルゴリズムを使い分けている。1つはユーザーがショッピングサイトの検索窓に入力したキーワードの履歴からお薦め商品を選ぶアルゴリズム。もう1つは、ユーザーがショッピングサイトで閲覧した商品の履歴や購入履歴からお薦め商品を選ぶアルゴリズムである。
2つのアルゴリズムを使い分ける理由は、ユーザーの購入行動に違いがあるからだ。ヤフーの北野正樹氏(ショッピング統括本部)は「検索キーワードを入力したユーザーは類似商品を選択する傾向がある」と話す。例えば、あるユーザーが興味を持つ商品名でキーワード検索したものの、表示された商品の写真や特徴、価格などを見て満足できなかったとしよう。すると比較対象となる類似商品に興味が移るケースが少なくない。そこで特定の検索キーワードが入力されたら、比較対象となる類似商品をリストから選び出し、それをお薦め商品として表示する。これが検索キーワードによるレコメンドエンジンのアルゴリズムだ。
一方、多くのユーザーは商品の選定から購入に至るまで、様々な商品を閲覧している。そこで閲覧履歴によるレコメンドエンジンは、こうした一連の行動が類似している人の閲覧・購入商品をリストから選び出し、お薦め商品として表示するアルゴリズムを用いる。同じ行動パターンを持つグループに対して、クリック率や購入率が高い商品をマッチングするわけだ。
お薦めした商品がクリックされないまま時間が経過すると、レコメンドエンジンはユーザーが既に商品を購入した、あるいは商品に興味がなくなったと判断し、お薦め商品から外し、次候補の商品を表示する。