全3208文字
PR

 もう1つの重要技術として青木氏が挙げる先行車追跡制御(トラッキング)は、先行車の動きに追従するように車両を動かす機能である。こちらも前述のRTK-GPSや3次元LIDARを使って車両の位置を制御する。カメラは車線維持制御(LKA)に使う。速度が出るような高速道路の本線上ではRTK-GPSを使い、低速時や右左折時にはLIDARを組み合わせて安全性を高める(図5)。

図5 後続車無人を実現するために3次元LIDARなどの機器を追加する(撮影:日経 xTECH)
図5 後続車無人を実現するために3次元LIDARなどの機器を追加する(撮影:日経 xTECH)
[画像のクリックで拡大表示]

 RTK-GPSを使った方式では、先頭を走る車両の座標を車車間通信を使ってリアルタイムで後続車に送る。後続車はその座標をなぞるように、電動パワーステアリングを制御して車両の進行方向を調整する。3次元LIDARを使った方式では、先行車との横ずれと傾き角度から目標位置を算出し、その位置を正しく通過するように後続車が自動で操舵する仕組みである。

 先頭を走るトラックは運転者が操舵するため自動運転機能は搭載しない。代わりに後続車を導く“司令塔”のような機能を備える。大型トラック3台で隊列を組むと長さは約60mに及ぶ。最後尾を走る車両の後方まで確認することが困難になるため、後部に向けて搭載したミリ波レーダーで、各車両が正しく隊列を成しているか確認する。また、道路インフラと通信して連携することも先頭を走る車両の役割だ。今回の実証実験では、GPSと送信機を組み合わせることによって、高速道路の合流地点に隊列走行のトラックが近づいてくることを、道路上のLED情報板で知らせるなどの仕組みを試す。

LIDARのコストが自動運転化のカギ

 隊列走行の先に見えるのは自動運転トラックの実現だ。単体の車両が自動で走るため、高速道路での長距離輸送に比べて個別での配送に向く。いずれの用途を想定しても、隊列走行で培ったRTK-GPSや3次元LIDARなどの技術は自動運転トラックに流用できる。

 例えば、いすゞは先進運転支援システム(ADAS)の機能を高めた小型トラックを開発中だ。試作車両は「センサープロト」と呼び、同社が手掛ける小型トラック「エルフ」を基に、ミリ波レーダー(77GHz帯)とLIDARを6個ずつ搭載する。車両周囲の死角を減らす。2025年以降に実現を目指す一般道での自動運転への足掛かりとする。

 実用化の課題はLIDARの価格が高いことだが、いすゞ執行役員で開発部門を統括する奥山理志氏は「2020年以降に価格が下がりそうだ」と予想する。欧州で自動車アセスメントを手掛けるEuroNCAPによる安全性能試験で、2020年以降は交差点での歩行者検知が加点対象となる見方が強いからだ。高得点を獲得するために、乗用車メーカーが量産車にLIDARを本格的に採用すれば、価格が下がる可能性が高い。

 トラックでの自動運転にはいくつかの難しさがある。その1つが車両の進路を推定することだ。車高が高く横風の影響を受けやすかったり、制動時に車両が左右にぶれたりと、トラックは乗用車に比べて想定外の動きをしやすい。キャブサスペンションで路面からの振動を吸収することで、車室部の「キャビン」が上下に揺れやすいことも、カメラやセンサーがぶれやすくなる要因だ。先行車両に追従することを基本としていた隊列走行に比べて、車両が担う「認知」「判断」「制御」の重要度が増す。障害物や歩行者などをうまく回避する必要があるため難易度は跳ね上がる。