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 「ドイツには気を付けろ、フォルクスワーゲンには気を付けろ。色々な人にこう言われた」――。日野自動車社長の下義生氏は2018年6月26日に東京の日野本社で開いた定時株主総会で、ドイツ・フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)のトラック・バス部門(以下、VWTB)との提携に対し、周囲からこのような助言を受けたことを明かした。

日野自動車は電気自動車(EV)トラックなど先進技術の開発を急いでいる
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 日野がVWTBと商用車分野における包括的提携の合意書に調印したことを発表したのは2018年4月。商用車を取り巻く環境の変化に“仲間づくり”で対応する決意を示し、VWTBのCEO(最高経営責任者)であるAndreas Renschler氏と固い握手を交わした(関連記事:VWと日野の提携、輸送業界の“悲鳴”を収益に変えられるか)。

 しかし、VWといえばスズキとの資本・業務提携で苦い過去がある。両社は2009年に提携を始めたものの、経営権や技術共用を巡って対立。国際仲裁裁判所で協議するまで話はもつれ、和解まで4年間を要した。そんなVWと手を結ぶことに日野の株主は不安を隠せない。総会の質疑で真っ先に上がったのは提携に対する説明を求める声だった。

VWとの関係性について聞きたい。VWは過去にスズキと提携していたが、常に優位に立とうとする姿勢があった。油断ならないリスクある相手だろう。なぜ提携したのかを改めて聞きたい。

 「気を付けろ」という助言の他に、「大丈夫か」という心配する声も貰った。懸念点は肝に銘じている。現段階で資本提携は全く考えていないし、対等な関係を築くことをCEOのRenschler氏と何度も確認済みである。

 VWTBはVW本体の100%子会社ではあるが、別組織として分離して活動している。さらに、2018年6月20日にはVWの冠を外し「TRATON GROUP」という名称を変えた。物流や人の移動に対する課題を解決する強い思いがあるのだろう。VWTBとは約1年に渡り協議を繰り返し、社会に提供しようとする“価値”を共有できた。