リアルタイムの道路情報を活用して燃費を改善し、人工知能(AI)を使いこなして安全性を高める――。ドイツ・コンチネンタル(Continental)はこうした機能を備えたトラック「Innovation Truck」を試作した(図1)。実力を確かめるため、記者はドイツへ飛んだ。
「今後10年でトラックの姿はがらりと変わるだろう。輸送事業者のTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)削減への要請は強まるばかりで、コネクティビティーやAIといった新技術を使った機能が必須になる」。Continentalで商用車事業を統括するMichael Ruf氏(Head of Business Unit Commercial Vehicles & Aftermarket)は将来を確信する(図2)。
同社は2018年7月、世界から限られたメディアを集め、ドイツ・フランクフルトで商用車の説明会を開いた。日本からは日経Automotiveだけが参加した。同説明会の目玉は、同年9月にドイツ・ハノーバーで開催される商用車のモーターショーとしては世界最大級の「IAA Commercial Vehicles 2018」での公開に先駆けて披露したInnovation Truck。
この試作トラックには、TCOや事故リスクを低減する技術を多く盛り込んだ。Continentalの調査によると、大型トラックのTCOの内訳で最大の30%を占めるのが燃料代。それに続くのが運転者の人件費で、全体の29%を占める。
無駄なブレーキを減らして惰性走行に
試作トラックの助手席に乗り込んでしばらく走っていると、フロントウインドー上部に配置した照明が青色に点滅し始めた(図3)。その状態で運転者がアクセルを軽く1回踏むと、照明は緑色に点灯した。エンジンと駆動輪をクラッチで切り離して抵抗を減らす「Eco Coasting」(以下、コースティング)機能が作動したことを表している。
Continentalが試作トラックに搭載したコースティング機能の特徴は、リアルタイムの道路情報を使って燃費改善を図っている点だ。具体的には、数km先の渋滞や速度制限の情報などを無線通信で取得し、加速しない惰性走行に切り替える。運転者による目視では直前にならないと渋滞や制限速度の変更を確認できないため、急なブレーキ操作によって無駄な燃料消費が発生している。