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 とはいえ、個人のお小遣いで購入できる範囲は限られています。そこで欲しい端末があってもお金がないときは、稟議(りんぎ)書を書いてでも会社の予算で購入します。

 決して不正を働いているわけではありません。タカさんは、無理やりにでもその端末と業務とを結びつけて上司に必要性を説きます。そして購入後もうまく業務に取り込んで結果を出し、上司からけちをつけられることがありません。会社のお金で自分の欲求を満たすという一見無理なことを実現させる行為が、タカさんの交渉力や企画力を高めているのではないかと感じています。

 見方によっては、企業の新製品広告に踊らされているだけのようにも思えるでしょう。しかし新しい情報や物に対するタカさんの欲求が、自身の能力をアップデートさせていることは間違いありません。

エアポートおじさんとして飛び回る

 こうしたタカさんの姿勢は、転職にも効果を発揮します。タカさんの取り組みや知識は、いつも他の人の少し先を行っています。豊富な情報や経験を自己PRにして企業に関心を持ってもらい、必ず自分が優遇されるポジションで内定を得ています。

 タカさんの転職先の多くは、中小企業や歴史の浅い企業です。大企業に比べて個人の自由が利くポジションが見つかりやすく、業務プロセスや社内ルールが確立されていないため自由裁量、言い換えれば自分の思った通りのことができるのです。こうした求人をうまく見つけて、転職後も楽しそうに働いています。

 ただし、こうした働き方をするにはタフさも必要です。タカさんは今も休む暇なく、国内外を飛び回っています。Facebook投稿は、ほとんどが国内外の空港の写真。いわゆる“エアポートおじさん”を地でいっています。出張前に飛行機の写真を撮ることが、タカさんの働くモチベーションになっているようにも思えます。

 タカさんのスケジュールはかなりハードです。例えば月曜深夜に羽田をたって、早朝にバンコクに到着。その日から数日仕事をして、月曜早朝にバンコクを出発。羽田には午前8時に到着し、そのまま通常出勤する――といった具合です。

 私も海外出張は好きなのですが、50代でこのスケジュールがこなせるかというと自信がありません。それを飽きることなく楽しみ、海外で新たな知識を得て次の成果に生かせるタカさんのバイタリティーには感服します。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。