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 またアプローチする際は、自分の意志をかなり強く伝えるべきです。以前、リファーラル採用の回で触れたように、「転職先で少し嫌なことがあった」「まだ自分がいたポジションは空いているかな」といった雑談を前職の同僚とする程度では、出戻りの道は開きません。自分の熱意をはっきりと伝えた上で、「出戻りをして在職時以上の働きができる」ことを具体的に示すことが求められます。

 採用側にとってみれば、出戻り採用をした「元社員」が成績不振だったり、モチベーションが著しく低く周囲に悪い影響を与えたりすると困ります。リファーラル採用と同じく、既に自社をよく知っていてパフォーマンスを発揮する可能性も高いからこそ採用するわけです。以前の在職時以上の能力発揮が期待されることは覚悟して応募しましょう。

出戻り採用の選考は厳しくなりがち

 筆者も、出戻り採用の選考が一般よりも厳しくなりがちなことは肌で感じています。以前金融業界で働いていたとき、規制緩和の影響で業界に無関係な企業がこぞって新規参入してきたことがありました。新規参入組は金融に詳しい人材を獲得するために一斉に中途採用を実施し、現在の年収の1.5倍などの好待遇を提示しました。

 それによって、筆者の周囲でも1年間で30人ほどが新規参入企業へと転職していきました。しかしその後の景況悪化によって、新規参入組は金融事業を縮小。金融系からの転職組の中には、その会社にいづらくなった社員もいました。

 その後、多くの社員が出戻りを画策したようです。しかし現職の社員に与える影響も考えて、かなり厳選した上での採用になりました。確かに、他社の条件が良いときには出ていって、自分に都合が悪くなったら戻ってくることが許されるのでは、そこで働き続けている社員にとってはたまったものではありません。

 ただし、在籍時に前向きにしっかり働いていた人なら、出戻り転職時にもそれほど不利になりません。例えば誰もが認めるパワハラ上司の下で頑張って働いていたが、思うような成果が上がらずつらい思いをして退職した場合。退職理由はネガティブでも、その人が頑張っていたこと、本人のせいで辞めたわけではないことは会社がよく分かっています。こうした場合なら、出戻り採用時の選考基準が厳しくなる可能性は低いでしょう。

出戻りがしやすいのは好景気のとき

 最後にお伝えしたいのは、出戻り転職をしやすいのはあくまで好景気のときであるということです。以前も書きましたが、リーマン・ショックのときにIT系の上場企業で財務役員をしていた知人が「退職者から戻りたいという電話が1週間で10件かかってきた、そのうち5件が自分の所轄部署への出戻り希望だった」とぼやいていました。

 当時はリーマン・ショックのあおりで自社の売り上げも低迷していたため、お断りしたそうです。今後の景気動向は分かりませんが、出戻り転職を考えている人は、今年度中に古巣にアプローチしてみてもよいかもしれません。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。