全2070文字

 東京株式市場で先日、日経平均株価が3万円を超えました。景気のいい話ですが、転職市場はどうなのでしょう。ここ1カ月ほどの間にも、複数社の早期退職者募集のニュースを耳にしました。厳しい状況に置かれている企業や従業員は少なくないと思います。

 今回は、ある有名企業を早期退職したヒゲさん(仮名・50代)の実話をご紹介します。悠々自適な隠退生活を送るはずが新型コロナ禍で事情が変わり、今では講師として働いています。ヒゲさんは技術者ではありませんが、早期退職後の生活を考えるうえで技術者にも参考になる事例だと思います。

早期退職後に海外移住、コロナ禍が直撃

 ヒゲさんは筆者の学生時代のサークルの先輩です。学生時代はミスタードーナツでコーヒーを何杯もお代わりしながら、一緒に他愛もない話に花を咲かせたものでした。その一方で勉強だけはしっかりしていたようで、超有名メディア企業に就職しました。

 そんなヒゲさんは50代になると突然、早期退職。家族の都合でアジアのとある国に移住してしまいました。周りからは退職金を手に悠々自適な隠退生活を決め込んでいるように見えました。そこに今回の新型コロナ禍がやってきて、帰国を余儀なくされました。

 ここからが問題です。日本に帰ってきたら住居を借り、従来の3倍の家賃を払わなければいけません。ヒゲさんは再び働かなければならなくなりました。

 古巣に戻るわけにもいかず、すぐに独立できるほどのスキルもない。まさに白紙状態だったのですが、そこから6カ月ほどで講師としてデビューを果たしました。

 コロナ禍の中で動画関連サービスが伸びていること、メディア企業で長く働いてきたことから「動画」に目をつけたヒゲさん。この分野で職を得るために、ヒゲさんは3つのことを実践しました。①情報収集、②学習実践、③場所不問です。この3つは、筆者が転職や起業を考える人に提案していることです。具体的にどんなことか、順に見ていきましょう。

知人に突撃インタビューする

 ①の情報収集は、「自分が得たいノウハウを持っている友人知人にとにかく会って話を聞く」ことです。

 ヒゲさんは50代ですから、学生時代の同期や後輩も同じ年代です。職場ではそれなりのプロフェッショナルになっています。忙しいだろうと気兼ねすることもなく、自分の生き残りのために突撃インタビューしました。

 駆け引きのない突撃インタビューなので、受ける方もむげにはできないものです。しかも「今からYouTuberとして売れるにはどうしたらよいのか」といったとっぴな相談を持ちかけられます。時には「おまえ、業界をなめているだろう」と冗談半分、怒り半分の対応を受けることもあったそうです。しかしヒゲさんはめげずに話を聞いて回りました。