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「年収半減」は避けた方がよい

 冒頭で紹介した「夫の転職に関する意識調査」に寄せられた回答者のコメントからも、さまざまな教訓が得られます。例えば「収入がリアルに半減しました(30代、専業主婦)」という意見。もちろん状況次第ですが、こうした場合は家族が転職を思いとどまらせてもよいのではないかと思います。

 面接の場では「処遇は御社の条件に従います」と答えても、入社後に年収が半減したら、モチベーションを高く保てる人は少ないでしょう。地元に帰って親の面倒を見る必要がある、家業を継ぐ必要があるなどの事情がある場合は別ですが、そうでなければ「年収半減の転職」はあまりお勧めできません。

 「転職先では、1年程度見習い扱いで、給与が安かった(50代、会社員)」というコメントもありました。これは、従業員を安く雇用するための口実ではないかと思います。見習いとして低い給料から始まった場合、昇給したとしてもスタートが低いので大幅な伸びは期待しにくいでしょう。

 企業によっては「前職と自社の給与テーブルが合わない」「本人の能力がその年収にふさわしいか判断しきれない」などの理由で、前職の年収よりも低い水準からスタートする場合があります。きちんとしている会社なら、四半期に1度などの頻度で目標設定、人事評価、昇給という道筋を用意しているはずです。そうした制度が整っているか、入社前に家族もチェックするとよいでしょう。

 なお、先の調査結果によれば「趣味にかけていたお金も生活費に回すようになった」「外食を減らした」などのコメントもあったそうです。これらを家族が不満に思うのは当然ですが、筆者としては「転職は外食をはるかに上回るごちそうであり、お金には代えがたい」と思っています。転職によって得られる経験の重みは計り知れず、その後の本人のキャリアに大きなプラスをもたらすからです。

 それを家族に理解してもらうのは、転職する当人の責務です。十分に家族と話し合いましょう。家族は納得がいかなければ、徹底的に説明を求めればよいと思います。

 ちなみに筆者は転職を円滑にするため、「家族に内緒で100万円の貯金をもち、年収の大幅ダウンなど万が一のときに妻に渡して理解を求めよう」と心に決めていました。しかし結局100万円はたまらないまま、今に至ります。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。アネックスのWebサイトはhttp://www.annexcorp.com/