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 普通なら、5本ほど動画をアップロードしたところで様子を見て、再生回数が伸びなければ落ち込むところでしょう。場合によってはアカウントを動画ともども削除するかもしれません。

 しかしヒゲさんのYouTubeページには、標準8分前後の動画がなんと40本も並んでいます。3カ月の間にここまで達成したのです。

 筆者に会いに来たヒゲさんには、心が折れた雰囲気や徒労感はまったく感じられません。「ヒゲさん、この再生回数で落ち込まないんですか?しかも動画制作の先生なのに」と質問してみたところ、ヒゲさんの回答は素晴らしいものでした。「そりゃ毎日心折れるよ。しかし、そんなことを心配している暇があれば動画の中身を考えていた方が楽だよ」とのこと。

 もともと映像業界にいたヒゲさん。業務用の撮影機材は一応使えるという強みがありましたが、PCを使った動画編集はずぶの素人でした。それなのに3カ月でカメラ、PC、動画編集ソフトもマスターしています。行動を起こす前に思い悩むのでなく、「まずは形にしてから考える」というヒゲさんの信念が表れています。

 この活動を転職に置き換えてみると、「落ちてもくじけない」「ダメでも履歴書を送る」「あれこれ言われても活動を続ける」といった姿勢になります。これも、なかなか容易なことではありません。

とにかく人に会う

 最後に、ヒゲさんは相変わらず人に会っています。会う際のエネルギーはますます強まるばかりのようです。

 筆者をはじめ仲間のところを相談して回っていた半年前は「まったく世の中そんなに甘くないですよ、ヒゲさん」といった対応をされていたようです。それが3カ月後、「え、本気なんですか」と皆の視線が変化。そして今では「本当にやったんですか」という驚きに変わりました。

 ヒゲさんは「このままじゃまずいよ」と言っていましたが、これだけのパワーがあれば何らかの成果につながるでしょう。万が一動画制作者として独立がかなわなくても、転職活動を始めたら恐らく内定を自力で獲得できると思います。

 それは、人にアドバイスしてもらったことを愚直に実行し、地道に実践しているからです。これは「あの人ならきちんと仕事をやってくれる」という評価につながります。

 ヒゲさんがこれからどうなるのか、筆者はとても楽しみです。早期退職のロールモデルとして、ぜひ成功してほしいと願っています。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。アネックスのWebサイトはhttp://www.annexcorp.com/