「オンボーディング」という言葉をご存じでしょうか。人事の世界では、主に中途入社した社員を受け入れ、業務に慣れるまでの一連のサポートをすることを指します。例えば入社後半年から1年ほど体系的な研修が組まれていたり、メンター制度が用意されていたりします。
10回ほどの転職経験がある筆者ですが、オンボーディングが人事の施策としてきちんと実施されている企業は複数ありました。20年以上前でも、1年間の手厚いサポートを提供してくれた企業もありました。
中途採用で入社した人は社会人経験を積んだ即戦力のはずなのに、なぜこのような制度を用意しているのでしょうか。いくら専門領域に詳しい即戦力といえど、入社した会社の風土や業務プロセスなど分からないことだらけです。それなのに配属先からは「期待の即戦力、お待ちしていました」などと言われ、分からないことを分からないと言いにくくなるのです。
オンボーディングを実施することで、こうした状況を回避できます。中途社員は社内に関する知識を備えることで新しい業務プロセスにスムーズに慣れ、もともと持っていた専門性をいち早く配属先で発揮できるようになります。
オンボーディングの制度を整えているということは、中途社員を大切な戦力と捉えている企業の姿勢を表すものかもしれません。中途入社後のことが不安な転職者は、オンボーディングの有無を転職先選択の1つの条件にしてみてもよいでしょう。
では、具体的にオンボーディングではどのようなことを実施するのでしょうか。代表的なものを挙げてみましょう。
- 上司との面談
- 導入研修
- チームメンバーとの面談・顔合わせ
- 人事との面談
- OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)
導入研修やOJTなどは新人研修でも実施される内容で、中途社員には不要ではと思われるかもしれません。しかし企業によってはオンボーディングに組み込んでいます。企業理念や自社の業務プロセスをきちんと説明し、前職のやり方を一度忘れてもらうために時間を取るなどしています。基本的な内容の研修もしっかり実施することで、配属後に職場で聞きにくい質問、疑問を解消する工夫もなされています。