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自分の身にも起こるかもしれない、会社都合での転職活動

 エンワールド・ジャパンの調査では、転職活動の状況についても尋ねています。現在転職活動をしていると答えた人は全体の43%。そのうちの82%が、新型コロナウイルス感染拡大より前に転職活動を始めていました。

 これは納得できる結果です。新型コロナ禍以前から国内の雇用状況は厳しくなっていました。19年の自然災害や消費税増税、日本の基幹産業の国際市場での競争力減などの影響で、早期退職制度が相次いで運用されるといった状況が起こっていました。

 注目したいのは、新型コロナ禍より前に転職活動を始めていた人のうち、理由を「会社都合(リストラ・失業等)」と回答した割合です。外資系企業社員は35%、日系企業社員は14%と、外資系が日系を21ポイント上回っています。

 一見すると日系企業は外資系企業より恵まれていると感じるかもしれませんが、人ごとだと思わないほうがよいでしょう。新型コロナ禍で国内企業も急激な業績悪化に見舞われています。今後、会社都合で転職活動をせざるを得ない人はさらに増えるかもしれません。そのことは理解しておきましょう。

 なお、エンワールド・ジャパンの調査では、「転職を検討していたが、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて検討を止めた」人が全体の13%いました。その理由としては、「事態が収束するまで様子を見たい」(70%)、「先行きが見えない状況下で転職することが不安」(65%)、「求人が減っていると感じる」(35%)が上位を占めました。

 不安定な状況の中で様子を見ようと考えるのは自然なことだと思います。しかし、だからといって全ての活動を停止してしまうのはお勧めできません。

 現在の勤務先の先行きも不透明な中で、転職に向けた準備をしておくのは決して無駄にはなりません。キャリアの棚卸しをしながら、自分を成長させることを何か1つ、今週中に始めましょう。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。