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 これは、要件にマッチした求職者を紹介したときですら起こります。条件は満たしていても面接で不採用になることはいくらでもあります。こうしたときでも、人材エージェントに見る目がなかったと判断されかねません。ですから顧客企業に人材を紹介する際、人材エージェントはかなり慎重になります。

 要件にマッチしない求職者とばかり面談している人材エージェントは、所属する会社の評価も下がります。個人経営の人材エージェントであれば、面談のコストばかりかかって売り上げが上がらないので、無駄な面談はできるだけ避けようとします。

 「人数さえ集まれば何でもいい」という企業でもない限り、人材エージェントに求められているのは大量の履歴書を送ることではありません。一度面談してもその後なかなか連絡が来ないのには、こうした背景があるのです。

「あなたの転職は難しい」とは言われない

 人材エージェントのビジネスは「顧客企業に求職者を紹介し、入社が決まったら紹介手数料を受け取る」というものです。「人材エージェントは人生相談やキャリア相談に乗ってくれるもの」というのは幻想です。転職初心者は、そのことを覚えておくとよいでしょう。

 人材エージェントと面談する際は、「求人紹介の可能性があるか」を確認してもよいでしょう。「何かあれば連絡します」「当面はなさそう」など具体的な可能性が示されなければ、他のエージェントを探すなど別の活動を始めたほうがよいかもしれません。

 なお、ほとんどの人材エージェントは「あなたの転職は難しいでしょう」とは言わないと思います。本人に気を使っているからという理由もありますが、経験豊富な人材エージェントほど様々な転職事例を見ているので、どんな人にも可能性はあるという思いがあるからです。

 すぐに求人は紹介されなくても、多くの人材エージェントとコンタクトを取っておくことで後々可能性が開けることもあります。転職初心者にとってみれば人材エージェントに連絡して面談すること自体が大仕事だと思いますが、ぜひ積極的に様々なエージェントと会ってみてください。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。著書に『転職エバンジェリストの技術系成功メソッド』『オンライン講座を頼まれた時に読む本』(いずれも日経BP発行)がある。アネックスのWebサイトはhttp://www.annexcorp.com/