新型コロナウイルス感染拡大の影響による、テレワークの広がり。これは、転職のキーワードの1つである「どこで働くか」にも少なからぬ影響を与えています。大都市から地方への転職に対する関心が高まっているようです。
これまでも、大都市での生活に疲れた人が地方への転職を考える例はありました。満員電車で出勤して遅くまで残業していた人が、時間がゆったりと流れる地方に転職し、職住接近、定時退社ができる勤務体系を求めるケースです。
コロナ禍によって、同様の希望を抱く人が増えているようです。20代専門の転職サイト「Re就活」を運営する学情が2020年5月に実施したアンケート結果によれば、「U/Iターンや地方での転職を希望する」が36.1%。たった3カ月前の2020年2月と比較して14.3ポイントも増加していました。
これを受けて同社は、U/Iターンを希望する2021年卒学生と20代を対象にさらなる調査を実施し、2020年6月18日に「2021年卒学生と20代転職希望者の意識調査比較(UIターンについて)2020年6月版」として発表しました。この結果によれば、U/Iターンを希望するきっかけとして「地方や地元に貢献する仕事をしたいと思うようになったから」を選んだ20代転職希望者は42.6%に上りました。
2021年卒の学生の就活にも、同じような影響が見られます。もともと地元に戻る予定はなかった学生さえも、地方や地元での就職を考えているようです。
大きな社会的混乱が起こると、人の価値観に少なからぬ影響を与えます。「社会貢献」「人の役に立つ」といった意識が高まり、結果として仕事選びにも変化が生じます。「地位・名声」「収入」「キャリア」よりも、「家族」「生きがい」「自分らしさ」を重視する傾向があります。2001年の米同時多発テロ事件や、2011年の東日本大震災などの後にも、こうした変化が見られました。
新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた今回は、日本でも多くの社会人がオフィスに行かず、自宅で仕事をする期間が長く続きました。これまでを振り返り、今後の働き方を改めて考えた方も多いでしょう。長時間の通勤がなくなり、家族と過ごす時間を改めて重要だと実感した人もいると思います。働き方が大きく変わったことで、考え方の変化が起こるには1カ月もあれば十分です。
業務上出社が必要だった方々にとっても、さまざまな環境の変化はあったと思います。価値観の変化は少なからずあるでしょう。