新型コロナウイルス感染拡大以降、早期退職者募集の増加など転職市場でも暗めの話題が続いています。今回は少し明るい話題を取り上げます。本連載にもこれまで何度か登場している、転職の達人スガさん(仮名・55歳)です。このコロナ禍の中でめでたく内定を得て、14回目の転職を成功させました。
転職の達人というと面接テクニックや職務経歴などが注目されますが、スガさんを見ているとそれよりも重要なものがあると気づかされます。スガさんが幾度も転職を成功させているのは、転職後の「働き方」が上手だからだと思うのです。働きながら、自らのモチベーションを高める能力を持っていると感じます。
2時間半の通勤を楽しみに変える
今回のスガさんの転職先は、通勤に片道2時間半かかる場所でした。首都圏を端から端まで横断するイメージです。コロナ禍の中でも電車は混んでおり、のんびりスマートフォンを眺めるような余裕はありません。
スガさんはこの状況にかなり参っていたようです。普段はあまり弱音を吐かないのに、毎日5時間も満員電車に押し込められるのはきつくてたまらないという叫びが聞こえてきました。
ただ、1カ月もするとスガさんの嘆きは全く聞かれなくなりました。何かあったのかと筆者が確認したところ、満員電車に慣れてきて、どの駅で誰の前に立ったら席が確保できるかが分かるようになったとのこと。
筆者からすれば取るに足らないことに見えましたが、スガさんにとってはそれが毎日楽しくなったそうです。特定の駅で降車する通勤客を複数人特定してあだ名を付け、自分が乗車してから30分以内には席を確保しています。SNSからは「誰々の前を確保!」「○○駅で狙い通り着席!」などの楽しげなメッセージが流れてきます。
スガさんは無意識のうちに、通勤の苦痛を楽しみに変えていたのです。今では、2時間半かかっても職場に気分良くたどり着いているそうです。毎日5時間も通勤に費やしているのですから、それをどれだけ快適な時間、楽しい時間にできるかで日々の生活は大きく変わります。