とても優秀なのに、なぜか中途採用選考で不合格になってしまう技術者がいます。本連載の第2回で職務経歴書の問題について説明しましたが、それ以外にも要因があります。

 私は企業の採用責任者として、多くの中途採用面接を担当してきました。「意識も能力も高いが、うちで内定は出せない」と感じる候補者の多くに共通していたのが、組織風土に対する不一致です。本人は、自分をしっかりアピールできた、質問にそつなく答えられたと手応えを感じていても、実は面接官は別の面をチェックしているのです。

 組織風土とは、それぞれの組織にある固有の雰囲気のことです。組織風土が自分に合うかどうかは、人が能力を発揮する上で非常に重要です。プロ野球の例を見ても、優秀な選手を9人そろえたからといって、優勝できるわけではありません。そのチームの組織風土によって、大きく能力を開花させる選手もいれば、力を発揮できずチームを去る選手もいます。

 代表的なのが、社員同士の呼び名。前職では「○○課長」「△△主任」のように役職付けで呼び合い、力関係がはっきりした組織で働いていた人が、役職に関係なく「さん」付けの会社に転職した場合など、なじむまで非常に時間がかかるといわれています。

 これ以外にも、服装や勤怠管理の仕方、リモートワークの可否や男女の比率など、仕事内容には直接関係のないことが、転職先での能力発揮に大きく影響します。新しい風土にすぐに順応できる人もいますが、前職の感覚をなかなか捨てられないと、本来の力を出し切れません。

 自分より年下の上司に抵抗を覚える人もいます。年功序列が当たり前の会社からIT業界に転職した人などに見られます。

 IT業界では、年下上司は珍しくありません。ポロシャツと短パン姿の年下上司にタメ口をきかれて、心が折れてしまい、早期退職というケースも多いのです。

 そうした人から必ず出てくるのが「あの会社はなってない、常識に欠ける!」という言葉です。よく話を聞いてみると、常識が欠けているというよりも、年下上司の言うことが素直に聞けなかっただけなのです。男性の場合は、年下だけでなく女性上司に慣れなくて退職する、というケースもあります。