新型コロナウイルス禍による景気悪化は避けられない状況です。不景気になると転職先候補として注目度が上がるのが、公務員です。
筆者はライフワークとしてさまざまな人の転職相談を受けていますが、その中には公務員への転職を考えている人もいます。実際に転職した人から経験談を聞くこともありますが、転職する前の予想とは違っていたという声は少なくありません。
その経験を基に、公務員として行政への転職を検討する際に知っておきたいポイントを3つ挙げます。この3点について考えた上で、自分が公務員として働くイメージを描いていただければと思います。
顧客を選べない
1つ目は、行政の仕事はずいぶん幅が広いということです。民間企業であれば、ターゲット顧客や取り組む事業領域をある程度絞ってビジネスをします。しかし公務員は顧客を選べませんし、取り組むべき領域も多岐にわたります。
最近では専門スキルを生かした採用も実施されていますが、仕事は一人でするものではありません。また役所の場合、特定の仕事さえしていればそれでよいということにはなかなかなりません。
都市計画や地域の活性化などのビジネス経験を生かし、困っている自治体の役に立ちたいと転職する人がいます。少子高齢化による人口減少、税収減など、財政難に直面する自治体は少なくありません。民間で鍛えられたビジネス感覚や知恵を生かしてほしいとの期待を受けて転職するのですが、思うようにいかないケースが少なくないようです。
転職する前に、民間の経営感覚と行政経営の感覚は異なることを意識しておきましょう。民間ならば対価を払ってくれる人が顧客ですが、行政の場合は担当地域に住む人すべてが相手になります。顧客を選べない立場でどう仕事を進めるか、そのイメージが持てるかは、転職前に考えておいたほうがよいでしょう。
「前例がないから認められない」は本当か?
残りの2つは、行政の良くない側面として語られがちなポイントです。まず、「行政機関は前例主義。前例がないことはなかなか認められない」という言葉について考えてみましょう。
こうした嘆きの言葉は、実際に自治体などに就職した公務員から聞くことがあります。高い志を持って就職した若者が挫折感を抱いたり、場合によっては民間に転職してしまったりします。
現実に、新規の取り組みが認められにくい側面はあるのでしょう。公務員は税金を使って業務に取り組む立場ですから、利害関係者も多く、そんなに単純に話が進まないのはある意味当然です。
ただしこの言葉を、新規の取り組みができていない言い訳にしてしまう人がいます。前例主義は、なにも行政に限ったことではありません。民間企業でも同様のケースは多々あります。実際、行政から民間に転職した人から「やっと新しいことに取り組めると思ったのに、上司からは前例がないからとだめ出しされる」という話をよく聞きます。
上司から「前例がないから承認できない」と言われてしまうのは、ひょっとしたら企画書の内容が上司を説得するには不十分なのかもしれません。諦念を持つ前に、企画の内容をブラッシュアップすることを意識しましょう。