「いったい、何を考えているんだ……」。本コラムに何度か登場している敏腕転職エージェントのモリさん(仮名)が珍しく怒っていました。いつもは穏やかな表情を崩さない人ですが、最近の転職事情を教えてもらおうとインタビューに訪れた筆者に、あきれ顔で話してくれました。
モリさんは人材エージェントとして20年以上の経験を持ち、最近はキャリアコンサルタントとして再就職者の支援もしています。大手企業を退職した求職者、特に50代前後の人と会って話すと、「前職の給料は維持したい」「税引き前で年収1000万円は何とか欲しい」といった要望が出てくるのだそうです。
会社員を辞めて久しい筆者からすると冗談かと思いましたが、それが現実とのこと。コロナ禍で転職市場が厳しさを増す中、「自分のどの経歴が年収1000万円に値すると思っているんだ」と言いたくなるような状況のようです。
人事担当者としてのキャリアが長い筆者も、試しにモリさんに聞いてみました。「人事で年収1000万円以上もらえる求人って、どんな内容ですか?」。モリさんからは「仕事は、世界各地の採用担当として働く部下のマネジメント。日本に居ながらにしてグローバルの採用戦略をつくり、英語で現地の採用担当への指示と最終面接ができることが条件」との答えが返ってきました。
かなりの経験やスキルが無ければ務まらない役職であることが分かります。大企業でコツコツと働いて年収1000万円を達成したからといって、転職時にそれを維持できるとは限らないのです。