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隣の芝生は青く見える

 「でも自分の周囲には、転職してつらそうな人はいない。転職した若者はみんな楽しそうに働いているから、自分も大丈夫だろう」。ここまで読んで、そう思われている方もいるかもしれません。

 そんな方にお伝えしたいのは、「皆さんの前に現れるのは、転職で成功した人だけだ」ということです。

 転職先で満足している社員は、学生時代の友人や元の会社の同僚の前に、胸を張ってやってきます。新しい職場でのやりがいや給与、20代ならではの恋愛事情を楽しそうに語ります。こうした話を聞いていると、転職は良いことだらけだと思ってしまいがちです。

 しかし、実際には転職で失敗した人も確実にいます。そしてそうした人は、皆さんの前に姿を見せません。元の会社にコンタクトを取ったとしても、「戻れないか」と人事部に陰で相談していたりします。

 実際、景気の悪いときはその傾向が顕著に見られました。10年前のリーマンショックの際、中堅IT企業に勤める知人に聞いてみたら「リーマンショック後、復職の相談で電話してきた元社員が10人を超えた」と話していました。従業員400人ほどの会社で10人超ですから、かなりの数です。

 隣の芝生は、青く見えるものです。見せかけの楽しさには注意しましょう。

目先の給与アップに惑わされない

 最後に、給与アップ目的の転職について触れておきましょう。最近、20代からの相談でこのテーマが増えてきました。

 相談者の多くは、銀行のローンで気軽にそれなりの大金を借りてしまった、リボ払いがかさんで月々の返済が大変になった、といった事情を抱えています。そこで一発逆転、月給数万円アップでローン返済を楽にしようというわけです。

 しかしそういう人に限って、転職した最初の年にはボーナスが支給されないことを忘れているケースがあります。目論見通りに収入が増えず、よけいに苦しい思いをします。

 借金を抱えていると精神的なストレスが高まり、仕事について冷静な判断ができなくなりがちです。そんなときに転職して、お金と仕事の両方とも不安定にする必要はありません。

 まずは、落ち着いて「月々、いくら欲しいのか」を考えましょう。現職が副業を認めているのなら、現職に留まりながらアルバイトをした方がよいかもしれません。

天笠淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。