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 「給与だけでは処遇は判断できない」。本コラムでも何度か書いてきましたが、転職後の支出入は各種の補助や福利厚生の充実度合いによって大きく変わります。給与だけにとらわれず、それ以外の手当がどの程度あるかを転職時にはしっかり確認すべしというのが常識でした。

 しかし、その常識が徐々に変わってきたように感じています。今後は何よりも年俸重視で転職先を検討したほうがよいかもしれません。

テレワークの広がりで廃止される通勤手当

 「ホンダ、通勤手当廃止 在宅勤務手当を新設」という記事が、日本経済新聞のWeb版に2020年8月29日に掲載されました。記事によれば10月1日から通勤手当を廃止し、拠点に実際に出社した回数に応じて実費精算するそうです。代わりに在宅勤務用の手当を新設するといいます。

 同様の動きはホンダ以外でも見られます。通勤交通費の支給方針の変更は、働き方だけでなく「どこに住むか」「どこに家を建てるか」にも影響を与えるでしょう。

 例えば、新幹線を使って長距離通勤をしている人。田舎に住居を構えて静かに過ごし、新幹線で都心に出てフルパワーで働く。このメリハリが効果的で、高いモチベーションを持って仕事にまい進できるというタイプの人がいます。

 こうした人の中にはテレワークに戸惑っているケースもあるようです。オフの時間を過ごす場所だった自宅が急きょ仕事の場に変わってしまい、東京から100km以上も離れた場所でこれまでと同じモチベーションを保つのは容易ではなさそうです。

 しかもここにきて「通勤交通費は都度請求」となると、新幹線で出社するのにもためらいを覚えるのではないでしょうか。家をどこに買うのか、そもそも家を購入すべきなのかといった人生設計そのものにも、テレワークの進展や通勤交通費の廃止は影響を与えるのではないかと思います。

統計調査から「精皆勤手当」や「家族手当」が消える

 給与については、厚生労働省の賃金構造基本統計調査にも異変がありました。筆者もよく参照している調査ですが、2020年から調査事項の一部を修正、削減するとのこと。ここまで述べてきた「通勤手当」をはじめ、「精皆勤手当」「家族手当」などが調査項目から削除されます。筆者はこの発表を見て、処遇の考え方が変わりつつあることを改めて感じました。