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 筆者のメインの仕事の1つは、研修講師です。クライアント企業が実施する社内研修の講師を年間150日ほど務めており、そのうち50日程度はキャリア研修を実施しています。その企業の社員に自分のキャリアプランを考えてもらうための研修です。

 その中で、実感している変化があります。自社の社員向けキャリア研修で「転職」「副業」「早期退職」などについても教える企業が増えてきているのです。自分の今後の仕事やキャリアプランを考える際に、自社の情報だけでなく、急変している労働環境を広く理解する必要が出てきているということです。

 新型コロナウイルスの感染拡大による経済の低迷で、雇用や労働をめぐる状況は一段と大きく変化しています。先日も「厚生労働省の調査によれば、新型コロナウイルス感染拡大の影響による解雇や雇い止め(見込みを含む)の人数が、2020年9月23日時点で6万439人に達した」とのニュースがありました。一生懸命働いても、自分の努力だけでは避けられない離職が増えているといえます。

 自社でも、経営不振などによる整理解雇が始まるのではと不安な方も多いでしょう。整理解雇は突然発表されることも多いのですが、企業側はそこに至るまでにさまざまなステップを踏んでいます。多くの企業はそのステップを踏みながら、なんとか従業員を守ろうとします(守ろうとしていると思いたいものです)。

 企業が整理解雇という大なたを振るう際には、4種の要件を満たすべしとされています。法的に規定されているわけではないのですが、過去の判例(東洋酸素事件、東京高裁1979年10月29日)に基づき、整理解雇をする際の指針となっています。

 1つずつ見ていきましょう。

解雇を回避すべく、努力する

 まず、人員整理(解雇)は最終手段とすることが求められています。人員整理の前にすべきことがあるということです。

 筆者自身、企業の人事担当者として人員整理をした経験がありますが、整理解雇に至るまでにはそれを回避すべく動き回りました。例えば「役員報酬の削減」「新規採用の抑制」「希望退職者の募集」「配置転換」「出向」などです。これらには1つずつ丁寧に取り組みました。

 オフィスの集約、無駄な経費の削減、デスクなど什器(じゅうき)の売却といったこともしていました。少しでも出費を減らし、100円でも収益を得られるなら売却していました。