「内定をもらっても退職できそうにない。どうしたらよいか」。転職を考える人から、この手の相談を多く受けます。現職を区切り良く円満に辞めて、新天地でスムーズに働き始められるのか。それを不安に思う気持ちはよく理解できます。

 私はこうした人に対して、まずは「内定をもらってから悩みましょう」と伝えるようにしています。現職が辞められないかもしれないという言い訳を作り、「転職したい、でもできない」と悩むのは心にも体にも良くありません。こういった理由で転職活動を先延ばしにするのであれば、きっぱりと転職をあきらめ、現職で能力向上を図るのも良いでしょう。

 とはいえ、内定を得たのに強い引き留めに遭うケースは実際にあります。人手不足を背景に、そうした企業は増えているようです。これをスルーするには、非常にハイレベルな能力が必要になります。

 優秀な人ほど、会社が辞めさせてくれません。また、「立つ鳥跡を濁さず」とばかりに残りの業務をきれいに終えて退職したいと思うあまり、仕事の手が抜けません。それによって新しい仕事が増えて、さらに転職しにくくなる、といった悪循環に陥ることがあります。自分で「いつまでに辞める」とゴールを決めて、退職の準備をするしかありません。

完璧な引き継ぎマニュアルを作る

 ではどう準備するか。私がお勧めの方法は、「完璧な引き継ぎマニュアルを作成する」ことです。

 引き留め時には、「あなたが退職したら○○の仕事は立ちゆかない」「○○社の△△さんとのやり取りは、あなたしかできない」などと言われます。確かに、自分でも今の業務を誰にどう引き継いだらよいか分からないとなると、辞めにくくなります。

 そこで前もって、引き継ぎマニュアルを作成しておきます。取引先リスト、業務マニュアル、取引先の社員プロフィールなどを、転職活動と平行して3カ月くらいかけて作成してはいかがでしょうか。まさに「備えあれば、(内定後の)憂い無し」です。

 引き継ぎマニュアルを作成することは、転職活動にも有効です。自分の仕事の振り返りや、長所・短所の発見ができるからです。現職の仕事を整理し、俯瞰することで、自己PRのポイントを整理して伝えやすくなったりします。転職活動の面接時に成果を聞かれた際にも、「こんな成果を上げています!」と具体的に提示できるようになります。

 実はこの方法は、私自身が実践していました。私の場合、企業に中途入社する際は、「採用時に与えられたミッションを完遂したら次の会社に移る」ことを前提にしていました。ですから入社日から、退職に向けたマニュアル作りをしていたのです。これが、円滑な離職に役立ちました。