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 不景気、不景気、不景気と口癖のように言う人がいます。こんな人が周りにいたら、どんなに気合を入れてもダークサイドに引き込まれるばかり。できるだけ近寄らないほうがよいでしょう。

 転職先を探すときも同じです。アドバイスを求めようと周囲に聞けば「うちの業界なんてやめたほうがいいよ、“オワコン”だから」と口々に言われることがあります。ここでいうオワコンは、「斜陽産業」の意味です。では、本当にオワコンなのでしょうか。

 結論から申し上げると、メディアやYouTuberをはじめとするインフルエンサー、そして本来信頼できるはずの知人の「この業界はやめておいたほうがいいよ」は、そのまま真に受けないほうがよいでしょう。参考にはしても、それを基に最終決定するのはお勧めできません。

 今は「コロナ禍による不況」といわれますが、日本経済はそれ以前から停滞気味でした。日本の基幹産業の国際競争力低下に加え、消費増税や台風などの自然災害が影響していました。さらに、コロナ禍による売り上げ減少がほとんどの産業を襲っています。こうなると、オワコン以外の業種や企業を探すほうが大変ではないかと感じさえします。

 早期退職の対象となる40代、50代には、転職を初めて考え始めた人もいるでしょう。転職がどういうものか分からず、まず学生時代の友人などに「おまえの業界どう?」と聞くこともあります。「うちはオワコンだよ」などという返事を信じていては、転職先を見つけるのは困難かもしれません。

5年後に残っているビジネスなら、転職先候補に

 実際、今後の社会環境や技術を考えるとマーケットが縮小、売り上げが激減する業界もあるでしょう。ただ激減する期間が来年なのか、5年後なのか、10年なのかで転職先としての評価は変わります。

 例えば、10~20年先を見据えると雲行きが怪しい企業を紹介されたしましょう。将来性がないと若手社員が流出した結果、欠員補充で採用している状態です。

 若手にとっては将来性がなくても、あなたが会社員としてあと5年勤務すれば定年を迎える年齢なら立派な応募先かもしれません。向こう5年はなんとか残るビジネスであれば、そこで会社員の終わりを迎えるのも1つの方法です。先の見通しが暗い業界だとしても、自分が働く機会を得られるのであれば転職先の候補になり得るのです。

 経営戦略のミスや不祥事で存続の危機にある会社もあります。ただ、捨てる神もいれば拾う神もいるもので、M&Aなどによって世界的な企業グループの一員になり、「お買い得な企業」と化す可能性もあります。製薬業界などではよくある話ですが、ほかの産業でも起こってくるでしょう。