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給与は下がり、仕事は大変に

 同業種内での転職には、元の上司や先輩に勧誘されるといったケースもあります。良い話と受け止めてしまうことが多いようですが、冷静に考える必要があります。

 前職の先輩が起業した会社に入社して苦労している鈴木さん(仮名・33歳)の例を見てみましょう。数千人のコンサルを擁する会社で働いていた鈴木さん。コンサルは転職するものだと、常日ごろ、社内で教育を受けていました。

 気合を入れて携わっていた3年間のプロジェクトが終わったときに、以前同じチームで働いていた先輩から、「一緒に働かないか」と声を掛けられます。先輩は既に退社し、自ら起業していました。鈴木さんは、尊敬していた先輩に誘われたうれしさと、「ベンチャー企業は大きな組織よりも自由に動ける」との口説き文句に魅力を感じました。

 しかも先輩の話では、ベンチャーとはいえ固定クライアントがいて、仕事には困らないとのこと。現職のコンサル会社からも継続的に案件を受注できるため、心配する必要はないのだそうです。確かに鈴木さんも、現職のコンサル会社にはOBのコミュニティーがあり、外注すべき案件をコミュニティー経由でOBに回していることを知っていました。実際に先輩の会社は都心に立派なオフィスを構えていますし、転職しても大丈夫だろうと判断しました。

 しかし転職してみて分かったのは、コミュニティー経由で回ってくる案件には、リスクが高いものも多いことでした。担当者が案件に対して全くの無知だったり、プロジェクトマネジャーがメンバーにむちゃぶりをすることで有名な人だったりと、前職に留まっていたら自分は引き受けなかっただろうと思う案件が多数ありました。

 とはいえ、鈴木さんが所属するベンチャー企業では社長の業務命令は絶対で、やれと言われればやるしかありません。結局、前職と仕事の内容は同じか、むしろ大変になったという状況。おまけに、給与は下がってしまいました。転職した意味を自問自答する毎日です。

 以上2件の事例を振り返ると、発注側から受注側への転職にはリスクもあることが分かります。もちろん、受注側に転職して生き生きと働いている人もいますが、そうでない人も少なくありません。悲劇を避けるには、新天地で現職以上の魅力が見つけられるかを検討して転職することをお勧めします。

天笠 淳
アネックス代表取締役/人事コンサルタント
天笠 淳 早稲田大学商学部卒業後、IT企業、金融機関にて人事業務を経験。株式会社アネックス、一般社団法人次世代人材育成機構の代表として、働きやすい職場づくりを主なテーマとし、企業の人事、人材開発のコンサルタントを行っている。次世代人材育成機構では、代表理事として、学生の就職活動へのアドバイスや、社会人のキャリア支援を20年以上手掛けている。