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 契約書の作成から内容や規約のチェック、文書やデータの管理、さらに裁判そのものまで、これまで多くが紙ベースだった裁判に関わる作業のペーパーレス化が急ピッチで進んでいる。この特集では「裁判のペーパーレス化」の最前線を追う。

 第1回はリーガルベンチャー、第2回は法令処理の自動化サービスの動きを紹介した。今回は裁判そのもののIT化を取り上げる。

 現状では、紙やファクスでのやり取りしかできない裁判所はペーパーレスに程遠い。海外では単なるペーパーレスにとどまらず、動画記録で裁判を進める国さえある。だが日本も裁判のIT化に向け、ようやく重い腰を上げ始めた。裁判のペーパーレス化で作業の効率化やデータ活用が進めば法務関係者だけでなく、国民や企業が恩恵を受ける可能性が高い。

IT化に積極姿勢を示す最高裁

 裁判のIT化に向けた動きは既に始まっている。裁判所と弁護士は2019年度からSkypeなどのソフトウエアを使って、民事訴訟の争点整理などの手続きを進められるようになる見込みだ。インターネットを使ってリアルタイムで音声や映像、ファイルをやり取りできる。

 内閣官房の日本経済再生本部は裁判手続きなどの全面IT化に向けて、有識者会議の「裁判手続等のIT化検討会」で議論を重ねてきた。2018年3月末に取りまとめを公表、訴訟記録の全面的な電子化を前提に、裁判の全面IT化に向けた3つのフェーズを示した。

図 裁判のIT化プロセスのイメージ
図 裁判のIT化プロセスのイメージ
(出所:内閣官房)
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 最高裁判所は日経 xTECHの取材に対し、内閣官房の取りまとめについて「現行法の下でWeb会議などのITツールを積極的に活用し、より効果的、効率的な争点整理を行えるよう検討している」(事務総局広報課)と回答した。訴訟記録の全面電子化についても「法制度に関する政府の検討状況を見守りつつ、必要な検討作業を行っていく」(同)という。

 最高裁はこれまでも「法定の手続き前の段階でSkypeを使って裁判所と弁護士事務所がやり取りすることも、法律上はできないはずはない」(事務総局民事局)との見解を示すなど、ITの活用に前向きな姿勢を見せてきた。政府が民事訴訟など法制度の改正に動き出せば、裁判所のIT化は一気に進み始めそうだ。

判例データの活用で訴訟結果を予測

 裁判所が訴訟記録の全面的な電子化を進めると、国民や企業が恩恵を受ける。判例がデータとして公開されて活用できるようになれば、国民や企業が裁判で争いを起こす前に訴訟結果の予測が容易になり、無駄な訴訟など法的争いを減らせる可能性が高いからだ。

 裁判所は現在、判決原本や和解調書を除く事件記録の保存期間を最短5年間と規程で決めているという。保管期間満了後に廃棄しない場合もあるが、データとして利用できるのは裁判所がWebに公開した一部の判決や、法律専門の出版社が有料で公開している判例データベースに収めたものに限られる。

 弁護士でもあるリーガルフォースの角田望CEO(最高経営責任者)は「裁判所の判例は国民の税金を投入して生み出された知的営みの集大成。にもかかわらず法律の専門家であっても、判例データベース以上のことは分からない」と実情を話す。

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