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 センサーを搭載した特殊なウエアを着用し、暗闇の中で目ではなくセンサーを使ってウエアを着た自分と物体との距離を把握する――。この新たな知覚体験を生み出すいわば衣服型のウエアラブル機器「echo wear」を開発したのが、先端的・実験的なメディアアートなどを手掛けるRhizomatiks Research(ライゾマティクスリサーチ)だ(関連記事「知覚を着る服を体験、ライゾマ真鍋氏らが開発」)。

 echo wearのような衣服型の機器では、電子的機能を生み出す配線と衣服の親和性が重要となる。その配線技術を担ったのが、変形・伸縮可能な電子回路の実用化を目指して独自のスマートアパレル「e-skin」を開発する、東大発のスタートアップXenomaだ。

 衣服型のウエアラブル機器では、東レとNTTが共同で開発した「hitoe」が有名だが、e-skinはこれとは全く異なる。hitoeは導電性高分子をPETナノファイバーニットに含浸させた導電性布であり、主に心拍などの生体信号を検知するための電極として使える。例えば、hitoeを利用するゴールウィンの「C3fit IN-pulse」はウエアの内側に電極としてhitoeを組み込んでいる。hitoeは電極として柔軟性があり洗濯耐性がある点を特徴とする。

 一方、e-skinは布状電子回路基板(Printed Circuit Faberic、PCF)技術を基に、ウエアに各種センシング機能を付加したシステム全体を指す。いわばウエアを「電子回路基板」として捉えた技術であり、基本となるのが柔軟・伸縮性のある配線を実現するPCF技術というわけだ。この技術は東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授が開発した。

 e-skinは2017年に開発者向けに発売。2019年にはBtoB向け計測器向けの製品を発売し、2020年にはいよいよ一般消費者向け品の発売に踏み切る計画だ。

Xenomaのスマートシャツ「e-skin」。センサーを備えるTシャツ「e-skin Shirt」とコントローラーで構成する。e-skin Shirtは、肩、胸、肩甲骨、背中、脇、ひじ、手首の7カ所(左右で合計14個)にひずみセンサーを備える(写真:Xenoma)
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 e-skinは、体の動きをセンシングする機能を備える。14個のひずみセンサーを備えたTシャツ「e-skin Shirt」と、コントローラー「e-skin Hub」で構成する。コントローラーは加速度センサーおよびジャイロセンサー(いわゆる6軸センサー)とBluetooth2.1による無線通信機能、マイコン、2次電池を備える。利用する際は、Tシャツにコントローラーを装着する。