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次世代量産品は2タイプ

 第1世代品の実用化と同時に進めてきたのが、企業や研究向けの専用品の受託開発だ。新たなセンサーを実装したりするなどして、用途別にカスタマイズしたe-skinを開発してきた。こうした経験を基に、今はセンサーの種類を収束させるフェーズに入っているという。

 「現時点ではインビジブル(着用負荷がない)とは言えない」(網盛氏)が、この状態でも需要が見込める2つの用途を見つけ出し、本格量産を見据えた次世代量産品の開発を進めている。狙うは、(1)動き計測を目的としたスポーツ分野と(2)職業ドライバーや認知症患者などのヘルスケア分野だ。

 (1)のスポーツ分野では、普段使いからすると多少特殊であっても必要な道具として認知されれば、ユニフォームとして身に着けることが普通になると見る。まず想定するのは、プロスポーツなどでの計測用途だ。

米国で開催された「CES 2018」での出展の様子。e-skinのアプリケーションの1つとして、ドイツのアパレル企業で紳士服やゴルフ向けウエアなどを展開するヒューゴボス(HUGO BOSS)と共同で開発したゴルフ向け製品を展示した(写真:Xenoma)
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 同社ではこれまでにゴルフ用のほか、サッカー向けに脚の動きを見るためのスパッツタイプなどを受託開発・生産してきた(Kickstarterでの紹介ページ)。そうした中で、体の部位ごとの角度や動きの速さ、位置を見たいという計測機のようなニーズがあることが分かってきたという。「従来搭載してきたひずみセンサーは手やひじなど体の使い方の癖は見やすいが、脇の動きや肩甲骨の位置などは見られない」(網盛氏)。そこで次世代量産品では、ひずみセンサーではなく、「慣性センサー」として6軸センサーを採用することにした。

スポーツ向けのe-skin開発品。「慣性センサー」として6個の6軸センサーを搭載する。無線通信にBLE(Bluetooth Low Energy)を採用するなどして、駆動時間を第1世代品の4時間から8時間に伸ばした(写真:Xenoma)
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スポーツ向けのe-skin開発品。「慣性センサー」として6個の6軸センサーを搭載する。無線通信にBLE(Bluetooth Low Energy)を採用するなどして、駆動時間を第1世代品の4時間から8時間に伸ばした(写真:Xenoma)

 腕(左右に2個ずつ)、腹、胸(コントローラー)に、合計6個の6軸センサーのチップを直接布に実装する。ひじの関節や腰の曲がり具合といった動きを見るため、曲がる部分をまたいで慣性センサーを設置するのがポイントという。例えばゴルフの場合、ひずみセンサーを使った第1世代品は「腕を上げた」「腕を上げようとした」ことは分かりやすいが、腕を上げた角度までは分からなかった。慣性センサー品ならば腕を振り上げた角度が分かる。一方、慣性センサーは止まっているものは検知しにくい。猫背による背中の張りなどを見るためには、第1世代品のようにひずみセンサーの方が適しているという。

 「体の動きを見る」という目的では、カメラを使ったモーションキャプチャーなどが競合となり得るが、網盛氏は「用途に応じて使い分けることになる」と見る。それぞれ一長一短があるからだ。カメラを使ったモーションキャプチャーは精度が良いという特徴を持つ。ただし、スタジオで撮影したり、マーカーを付けて多数のカメラを設置した空間内で撮影する必要がある。「特にスポーツでは、普段と違う環境では通常のパフォーマンスを発揮するのは難しい」(網盛氏)。設備の価格が高いといった課題もある。

 一方、e-skinのようなウエアラブル型の場合はウエアがデバイスであり、空間は通常と同じでよい。電極を身体に密着させるため着圧が高いなど、通常のウエアとは違う場合もあるが、違和感がなくなる方向へと開発が進んでいる。

 スポーツ分野の次世代品は、既に量産体制が整っているとする。2019年に500~600米ドル前後、あるいはそれ以下の価格での販売を計画する。最初のターゲットはプロスポーツでの計測用途だが、「市場規模はあまり大きくない」(網盛氏)。そこで次のステップとして、市民マラソンランナーのようなスポーツ愛好家への対象拡大を狙う。

 既に心拍計測が普及しているのでバイタルデータの取得に対する抵抗感が少ない上に、自身の動きやフォームに対する関心が高く、市場性が見込めるとする。スポーツ愛好家に向けた“廉価版”も計画しており、2020年を目途に発売を目指す。ウエア単体の価格をさらに機能を絞り込むなどして100米ドル前後に抑え、アプリによる課金といったサービスモデルを検討しているという。

 スポーツ分野では、新しい「e-sports」の開発にも取り組んでいる。e-sportsは対戦型コンピューターゲームを競技スポーツとしてとらえたものだ。従来はキーボードやコントローラーなど手元で操作するのが主流だった。それに対して、e-skinを使って検知する体の動きをデータとして利用する新たなゲームを開発しようというのだ。Xenomaでは、e-spots動画の配信を手掛けるExtractorと共同で開発を進める。