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自己治癒コンクリート、自己修復コンクリートという言葉をよく耳にするようになった。例えば、前者は北海道苫小牧市の會澤高圧コンクリート、後者は日本大学工学部のパリーク・サンジェイ准教授が実用化を目指している。現在どんな状況にあるのか、開発の最前線を訪ねた。
今後新たに建設する構造物に対し、自己治癒・自己修復の機能を取り入れることによって、コンクリート構造物の寿命を2~3倍に長寿命化することが可能だといわれている。
自己治癒・自己修復は3種類の仕組みに大別できる〔図1〕。1つは従来のコンクリートにも見られる現象で、未水和セメントが水分と反応してひび割れを修復する「自然治癒」。2つ目は、人工的な装置により、修復する「自己修復」。3つ目は、自然治癒能力を高めることを目的とした混和材などを活用して修復する「自律治癒」だ。自然治癒と自律治癒を包括し「自己治癒」とされている。
国内では、コンクリートをまるで生命体のようにする技術開発が進んでいる。例えば、その1つが會澤(あいざわ)高圧コンクリート(北海道苫小牧市)の自己治癒コンクリートで、もう1つが日本大学工学部のパリーク・サンジェイ准教授が研究を進める自己修復コンクリートだ。
両者の技術は、コンクリート内にそれぞれの仕組みをあらかじめ仕込んでおくことで、外部から人が手を加えなくても、何度もひび割れを修復することができる。実用化が目前に迫った2つの技術のメカニズムをそれぞれ見ていこう。