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 福島県は、安積(あさか)中高一貫校の設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、最優秀者に千葉学建築計画事務所(東京・渋谷)を選定した。次点優秀者はNASCA(東京・新宿)とウエガイト建築設計事務所(東京・台東)、はりゅうウッドスタジオ(福島県南会津町)の3社によるJV(設計共同体)だった。

博物館と新校舎に挟まれたアプローチは、新たな活動の場と学校の歴史を体感できるシンボル空間。明るく開放的な図書室から博物館全体を眺めることができる(資料:千葉学建築計画事務所)
博物館と新校舎に挟まれたアプローチは、新たな活動の場と学校の歴史を体感できるシンボル空間。明るく開放的な図書室から博物館全体を眺めることができる(資料:千葉学建築計画事務所)
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 新たな中高一貫教育校では、「国内外に通用するトップリーダーの育成」を実現するため、STEAM教育(Science/科学、Technology/技術、 Engineering/工学、Mathematics/数学を統合的に学習するSTEM教育に、さらにArts/リベラルアーツを統合する教育手法)を柱に据える。主体的で対話重視の教育を展開し、質の高い学力を育成する。

 既存の安積高等学校敷地内に中学校を併設する。安積高校の正面に立つ旧福島尋常中学校本部(旧本館)は、1977年に国の重要文化財に指定され、現在は「安積歴史博物館」となっている。中高一貫校として、6年間を見通した教育活動を、豊かにかつ機能的に展開するために必要な施設を整備するに当たって、プロポーザルでは、次の6課題に関する提案を求めた。

 (1)既存学校施設との連続性や一体性、交流などに配慮した施設、(2)主体的かつ対話によって深い学びを実現できる施設、(3)中学生と高校生が共に学ぶ空間を実現する施設、(4)長寿命化を図るため、ライフサイクルコストの縮減や維持管理の容易性およびニーズの変化に伴う可変性に配慮した施設、(5)安積歴史博物館などとの景観に配慮した施設、(6)その他、本施設の計画において特に重要と考える事項。

最優秀者による技術提案書の一部。安積歴史博物館の壮大なファサードを空間の骨格に据えた新校舎を提案した。一方で、南側は既存校舎群にも通じるシンプルなコンクリートフレームとすることで、学校全体で新たな価値を生むことにつなげる(資料:千葉学建築計画事務所)
最優秀者による技術提案書の一部。安積歴史博物館の壮大なファサードを空間の骨格に据えた新校舎を提案した。一方で、南側は既存校舎群にも通じるシンプルなコンクリートフレームとすることで、学校全体で新たな価値を生むことにつなげる(資料:千葉学建築計画事務所)
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 千葉学建築計画事務所による案は、「響き合う校舎」がテーマ。安積中高一貫校の象徴である安積歴史博物館の壮大なファサードを空間の骨格に据えた新校舎を提案している。2つの時代の校舎が響き合うように、安積中高一貫校が受け継いできた歴史・伝統と、新たな教育をリードする先進性を併せ持った学校を目指す。

旧校舎の記憶を紡ぐファサードに対して南側はシンプルなフレームにして、2つの時代の建物を結びつける(資料:千葉学建築計画事務所)
旧校舎の記憶を紡ぐファサードに対して南側はシンプルなフレームにして、2つの時代の建物を結びつける(資料:千葉学建築計画事務所)
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地域開放に利用可能な交流ラウンジ。中央のコモンスペースからは吹き抜けを介して様々な活動が見渡せる(資料:千葉学建築計画事務所)
地域開放に利用可能な交流ラウンジ。中央のコモンスペースからは吹き抜けを介して様々な活動が見渡せる(資料:千葉学建築計画事務所)
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 審査講評によると、「大きなボリュームの中に、分節化された小部屋を市松状に埋め込む構成は、施設に要求される集団学習、少人数指導による学習、個別学習といった学習単位において柔軟に対応できる設定となっている。また、維持管理の面でも、将来的な設備機器の更新を容易にするルート設定など、十分な検討が加えられた提案であり、市松状に再構築された歴史博物館に面するファサードなどと合わせて、秀逸なアイデアの中に複合的な要素の整合が図られている」と、高く評価された。

 さらに、「ランニングコストの増大が懸念される大規模な吹き抜けを抑制しつつ、歴史博物館との連続性を十分に意識した空間構成となっており、設計者の高い練度が感じられる」としている。