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 高知県佐川町(さかわちょう)は「佐川町新文化拠点(仮称)」(以下、新文化拠点)の基本設計者を選ぶ公募型プロポーザルで、ハウジング総合コンサルタント(高知市)と森下大右建築設計事務所(大阪市)、ishibashi nagara architects(東京・渋谷)の3社によるJV(設計共同企業体)を最優秀に選定した。次点は細木建築研究所(高知市)とNASCA(東京・新宿)のJVだった。

 森下大右建築設計事務所は、森下大右氏が昭和設計を経て2021年に設立。ishibashi nagara architectsも同年の設立で、久米設計と千葉学建築計画事務所に在籍した石橋慶久氏、昭和設計と大西麻貴+百田有希/o+hに籍を置いた長柄芳紀氏がともに代表を務める。

アクソメパース。図書館の中心に大黒柱を配置し、大きな木の下にみんなが集い、学ぶ広場のような空間とすることで文教のまち、植物のまち佐川を象徴する新文化拠点を目指す(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
アクソメパース。図書館の中心に大黒柱を配置し、大きな木の下にみんなが集い、学ぶ広場のような空間とすることで文教のまち、植物のまち佐川を象徴する新文化拠点を目指す(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
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 新文化拠点には、蔵書の収集保存と提供といった図書館機能に加えて、デジタルを活用したものづくり機能を集約する。プロポーザルでは、建築提案だけでなく、町内の情報環境の設計も求めているのが特徴だ。図書館における蔵書の概念を広く「情報」と捉え、佐川の人々(人材)、 NPO や企業、地域活動、イベント、各種文化施設、図書・雑誌資料、データベースなどをネットワーク化して活用できるようにすることを想定している。

最優秀案の技術提案説明書の一部。誰でも使いやすく管理しやすい8の字ワンルームの平屋。8の字プラン、開閉可能な建具、中庭によって、活動に合わせてモードチェンジできる計画としている(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
最優秀案の技術提案説明書の一部。誰でも使いやすく管理しやすい8の字ワンルームの平屋。8の字プラン、開閉可能な建具、中庭によって、活動に合わせてモードチェンジできる計画としている(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
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 最優秀案は「未来のさかわを育んでいく『学びの広場』」がテーマ。新文化拠点とまちを舞台に、ともに学び、ともにつくるための3つの概念――「新たな活動へと導く人:ガイド」「活動がしやすい場と機会:スタジオ」「人と情報をつなげる術:ミドルメディア」――を導入し、佐川町を舞台に生まれる様々な活動や、佐川町のこれまでとこれからをつなぎ、新たなまちの公共図書館の在り方を描く施設を提案している。

内観イメージ。受付カウンター前から開架コーナーを見る。右手に「まきのさんの庭」、正面に中央スタジオや大黒柱が見える(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
内観イメージ。受付カウンター前から開架コーナーを見る。右手に「まきのさんの庭」、正面に中央スタジオや大黒柱が見える(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
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 審査講評では、「情報の導き手としての『人:ガイド』と、情報へのタッチポイントとしての『場:スタジオ』、そして情報のコンテナとしての『術:ミドルメディア』の3 つの概念を導入することで、やってみたいという小さな思いと、まちで生まれる様々な活動の間をつなぐこと、そして佐川町のこれまでとこれからをつなぐことなど、実空間と情報空間をつなぐことを中心に置いた提案」とされた。

西側からの外観。周囲の山並みに呼応する大屋根と厳しい日射や激しい風雨に耐える深い軒を組み合わせた高知県ならではの特徴的な屋根を提案した(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
西側からの外観。周囲の山並みに呼応する大屋根と厳しい日射や激しい風雨に耐える深い軒を組み合わせた高知県ならではの特徴的な屋根を提案した(資料:ハウジング総合コンサルタント・森下大右建築設計事務所・ishibashi nagara architects JV)
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 また、「新しいことにどんどんチャレンジするおおらかさこそが佐川らしさであるとし、大きな木の下のような、おおらかな屋根がつくる風景や、その大きな屋根の下にみんなが学び合う風景こそが佐川らしいシンボルであるとした明快な提案だった」と講評している。